第22話 「ゾンビ少年と赤い神聖ばあ」

文字数 1,064文字

休憩室に戻ると、
真紀子、源じい、
田所は自室に戻ったようで、
ソファーに寝転がっていたのは、
安達が増えて若者三人だった。

コーナー型の大型ローソファーなので、
それぞれが大の字になって、
気持ちよさそうに寝ている。

向井は空いてる場所に腰を下ろすと、
冥王から渡された雑誌をめくった。

内容は―――

時は大正。

突如現れたゾンビに人々は襲われ、
大パニックになっていた。

その時登場したのが二人の戦士。

赤い羽織りを着た老婆とゾンビの少年。

少年はゾンビに襲われたものの、
何故かゾンビにはならず、
人間の姿のままの死人として、
ゾンビから人々を守っていた。

そしてもう一人。

老婆もまた、
魔を避ける特別な赤い羽織りを着て、
少年とともに戦っていた。

この二人の謎を含みながら、
話は続いていくのだが、
何せ短編なので、
重要なところは分からず、
続くような終わり方になっている。


なんだかよくわからないが、
確かに少し気になるかもな。

向井が、
そんなことを考えながら読んでいると、
上からのぞく新田の姿があった。

「なに? 漫画?  
それ冥王が毎月、
楽しみにしてるやつですよね」

「ああ、
どうもこの中の物語の一つが、
気になっているらしくてね。
面白いから読めと渡された」

「で、面白かったですか? 」

新田はそういいながらソファーをまたいで、
横に座った。

「読んでみる? 
俺にはよくわからない世界だけど、
俳優の新田君なら、
演じてみたくなるような、
話かもしれませんよ。
ただ主人公が、
おばあさんとゾンビ少年なんですよね」

「それはまた変わった設定ですね」

新田は雑誌を受け取ると、
読み始めた。

真剣に読んでいる新田を横目で見ながら、
向井はテーブルに残っていた、
コンビニのおにぎりを手に取った。

真紀子さんが片付けてくれたようで、
残ったサンドイッチやピザには、
ラップがかけられていた。

おにぎりを食べていると、
新田が雑誌を見ながら言った。

「ふぅ~ん。
この続きってあるんですか? 」

「やっぱり気になる? 」

「含みのある終わり方なんで、
この後どうなったのかな? って」

「これね、
今派遣霊の一人がアシスタントで、
続きを手伝ってるんですよ」

「へえ~」

「新田君は恋愛ものが多かったから、
こういうのってどうなのかな」

「いや、面白いですよ。
少年の年齢を少し上げてくれるなら、
演じてみたいです。
ただ今は役者よりこの仕事の方が、
やりがいはあるかもしれませんけど。
だって映画みたいじゃないですか」

「まあ、確かにね」

二人は同時にケラケラ笑った。

その笑い声に寝ていた三人が、
目を覚ました。

「なに? 」

牧野が目をこすりながら起き上がった。
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