第83話 増える地震

文字数 1,218文字

それからしばらくして、
地震が多く発生していることもあり、
下界では警報が鳴り響いていた。

「地震が多いと、
光の渦で運ばれる霊が増えますよね」

死神課のカウンターで、
チェックを入れていた向井にセイが言った。

派遣霊が無事再生されていったので、
終了のサインをしに来ていた。

「霊も予期せぬ自然界の動きには、
敏感みたいで、
光の渦に導かれて成仏するものは、
多いですよ。
俺としては、
その方が楽なので助かりますけど」

「へえ~そうなんですね。
ここ一年半くらい、
災害も少なかったですけど、
このところまた地震が増えてますからね」

「う~ん、そうだね。
ひずみが大きくなってるから、
プレートのずれもあるのかな」

「ただ、悪霊が増えてるので、
牧野君はずっと動きっぱなしで、
不機嫌ですけど」

「それはちょっと可愛そうですね」

向井も笑った。

そんな話をしていると、
牧野が佐久間と戻ってきた。

「ご苦労様です」

「向井も手伝えよ」

牧野がふくれっ面で言った。

「俺も安達君とパトロールして、
さっき戻ってきたんですよ」

「悪霊は牧野君の担当だからね。
それに付き合わされている私の方が、
文句を言いたいです。
環境課は力仕事じゃないんですから」

佐久間も疲れた様子で、
カウンターに寄りかかった。

「俺さ~
冥界札を銃で撃てるものを、
開発してほしいって前から言ってんだけど、
作ってくんないのよ」

「作らないのではなく、
作るのが難しいんです」

牧野の文句に、
後ろから夢鬼が書類を片手に言った。

夢鬼は研究・開発室の研究員だ。

「牧野君はあーだこーだと注文も多いし、
あとから変更もあるので、
うちでは後回しになってるんですよ」

「そんなにうるさく言ってねえよ。
銃は軽めで、
片手で簡単に撃てるやつで、
冥界札は五十枚は最低装填出来て、
射程距離も~」

「ねっ、うるさいでしょ」

夢鬼は遮るように言った。

「何か用? 」

セイが尋ねると、

「ああ、これ。
カウンターにも置いといてくれる? 
掲示板には貼っておいたので」

夢鬼が手に持っていた印刷物を渡した。

見ると緊急講義とある。

「何ですか? 」

向井が紙を手に取ると夢鬼を見た。

「最近地震が多いでしょう? 
それに伴う霊の除去や、
保護についての講義を、
うちの室長が行うんです。
時間があれば、
皆さんに参加していただきたいんですけど」

「講義? 冗談だろう。俺、勉強キライ」

牧野はそれだけ言うと逃げ出した。

「牧野君にじっと講義をうけさせるのは、
無理でしょうね」

向井が苦笑いを浮かべた。

「これって、最近の地震で、
霊の環境も変わってきているんですか? 」

佐久間が紙を見ながら聞いた。

「霊って言うより、
今までその場から動くことのなかった、
地縛霊などの動きが、
活発になっているのと妖怪も移動してきて、
対処法も多少変わってるんです」

「そうなんですね。保護にも関係するなら、
俺も安達君と参加しますよ」

向井がいい、

「私も牧野君を引きずって、
と言いたいところですが、
無理そうなので私だけ参加します」

佐久間はそういうと笑った。
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