第108話 黒谷登場
文字数 1,141文字
「あんたら死神みたいなもんなんでしょ? 」
「死神……とはちょっと違いますけど、
まあ、
上から来てるから似たようなもんですかね」
向井もそういうと笑った。
「ところで、
この団地は何かあるんですか?
住人の方が出て行くようですけど」
向井が聞くと、
「ああ、移民特別委員会が来て、
来週から外国人労働者の、
住まいになるからって、
俺達は追い出されたわけ」
「黒谷さんも退去ですか? 」
「そう。まあ、とりあえず、
次の仕事まで非監視ネカフェにいて、
その間に住める団地を探すつもり」
最近は国中に監視が付いて回るので、
非監視アラートを付けている店も、
多くなった。
国からは、
監視抑制はしないように言われているが、
店によっては、
法案に逆らっている場所もある。
一応政府から、
配布されているステッカーはあるが、
客の要望に応えて表カフェ以外にも、
裏カフェを選択できるようにしていた。
ステッカーだって有料なのだから、
それをしてでも運営せざるを得ない事情も、
あるという事だ。
反対にそれが犯罪を生むという声もあるが、
一時、指紋や眼球登録にして、
殺人事件が増えたことで、
努力義務になった経緯もあるので、
国の新法案に疑心暗鬼の国民も増えていた。
「この国って、
築年数の古い団地が沢山あるだろう。
利便性のあるところは、
外国人用住居になるから、
それ以外のところで探せば、
何とかなるから」
「前向きなのはいい事です」
「リストラからこっち、
災難続きだからもう慣れた。
困ってるときは、
高田さんが差し入れくれたし」
「それは差し入れが欲しいという、
催促でしょうか」
「そう聞こえた? 」
「まあいいです。
高いものじゃなければ、
必要なものを少し届けますよ」
「おっ、助かる。
そのかわりと言っちゃなんだが、
俺で役立つことなら何でも聞いて。
教えるから」
そんな話をしていると、
団地の階段から老女が一人、
こっちに向かってやってきた。
向井が姿を消すと、
「あれ? 今、
誰かとしゃべってなかったか? 」
「いや、俺だけ」
「そうか」
「玲子ばぁは、
ここ出てどこ行くか決まってるの? 」
老女は杖で体を支えながら言った。
「あたしはほら、
あそこにいる親戚が、
次の団地が決まるまで、
置いてくれるって言うから、
その間に住宅課にいって、
団地の抽選登録してきたよ」
「そうか。俺もしとかないとな。
移民特別委員会が、
来なさそうなとこだと、
ちょっと不便なんだよね」
「あんたはほら、PC?
あれで仕事もしてるし、
不便なとこでも暮らせるだろ? 」
「日雇いも入れなきゃ、
家賃も光熱費も払えねえよ」
「そうか。
あたしも内職しとるからな。
次もあんたと同じ団地なら、
助かるんだけどね~」
「玲子ばぁはどこを登録してきた? 」
「え~、家賃が安い………こことここ」
玲子は紙をトートバッグから取り出すと、
黒谷に渡した。
「死神……とはちょっと違いますけど、
まあ、
上から来てるから似たようなもんですかね」
向井もそういうと笑った。
「ところで、
この団地は何かあるんですか?
住人の方が出て行くようですけど」
向井が聞くと、
「ああ、移民特別委員会が来て、
来週から外国人労働者の、
住まいになるからって、
俺達は追い出されたわけ」
「黒谷さんも退去ですか? 」
「そう。まあ、とりあえず、
次の仕事まで非監視ネカフェにいて、
その間に住める団地を探すつもり」
最近は国中に監視が付いて回るので、
非監視アラートを付けている店も、
多くなった。
国からは、
監視抑制はしないように言われているが、
店によっては、
法案に逆らっている場所もある。
一応政府から、
配布されているステッカーはあるが、
客の要望に応えて表カフェ以外にも、
裏カフェを選択できるようにしていた。
ステッカーだって有料なのだから、
それをしてでも運営せざるを得ない事情も、
あるという事だ。
反対にそれが犯罪を生むという声もあるが、
一時、指紋や眼球登録にして、
殺人事件が増えたことで、
努力義務になった経緯もあるので、
国の新法案に疑心暗鬼の国民も増えていた。
「この国って、
築年数の古い団地が沢山あるだろう。
利便性のあるところは、
外国人用住居になるから、
それ以外のところで探せば、
何とかなるから」
「前向きなのはいい事です」
「リストラからこっち、
災難続きだからもう慣れた。
困ってるときは、
高田さんが差し入れくれたし」
「それは差し入れが欲しいという、
催促でしょうか」
「そう聞こえた? 」
「まあいいです。
高いものじゃなければ、
必要なものを少し届けますよ」
「おっ、助かる。
そのかわりと言っちゃなんだが、
俺で役立つことなら何でも聞いて。
教えるから」
そんな話をしていると、
団地の階段から老女が一人、
こっちに向かってやってきた。
向井が姿を消すと、
「あれ? 今、
誰かとしゃべってなかったか? 」
「いや、俺だけ」
「そうか」
「玲子ばぁは、
ここ出てどこ行くか決まってるの? 」
老女は杖で体を支えながら言った。
「あたしはほら、
あそこにいる親戚が、
次の団地が決まるまで、
置いてくれるって言うから、
その間に住宅課にいって、
団地の抽選登録してきたよ」
「そうか。俺もしとかないとな。
移民特別委員会が、
来なさそうなとこだと、
ちょっと不便なんだよね」
「あんたはほら、PC?
あれで仕事もしてるし、
不便なとこでも暮らせるだろ? 」
「日雇いも入れなきゃ、
家賃も光熱費も払えねえよ」
「そうか。
あたしも内職しとるからな。
次もあんたと同じ団地なら、
助かるんだけどね~」
「玲子ばぁはどこを登録してきた? 」
「え~、家賃が安い………こことここ」
玲子は紙をトートバッグから取り出すと、
黒谷に渡した。
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