第100話 特例牧野誕生 

文字数 1,033文字

「牧野君、
君は除去課に配属が決まりましたから、
悪霊、妖怪、怨霊、
問題のある危険霊の対処を、
このひと月でマスターしてもらいます。
トレーニングルームで、
基礎訓練もするからね」

ここにきて三日目になると、
それぞれに仕事内容が振り分けられた。

特例調査室の室長の狭間は、
タブレットを見ながら説明を続けた。

「新田君は再生課に決まりました。
基本冥界での魂の仕分け作業ですので、
危険は少ないと思います」

「ちょっ、ちょっと、
何で俺は危険な任務なんだよ」

牧野が椅子から立ち上がって、
文句を言った。

「牧野君のように、
若くて体力があり余っている人は、
除去課に配属が決められているんでね」

「悪霊と戦うなんて戦隊ヒーローだね」

新田が笑顔で言った。

「あのな~」

牧野が愚痴るのを遮り、

「それと……向井君は派遣課なので、
あとで冥王から、
説明を受けることになります。
こちらは特殊任務になるので、
更に少し習得することがあります」

「分かりました」

向井が返事をすると、

「あっ、そうそう。
あと一人保護課に配属された、
安達君という特例がいます。
彼も特殊任務なのでここにはいないけど、
いずれ会うことになると思うから。
君達より前から任務に就いている特例も、
今現在六人いるので、
訓練期間後に顔合わせになります。
訓練は明日からになるので、
ゆっくり休んでください」

狭間はそれだけ言うと、
部屋を出て行った。

「死んだのにこんなことさせられるって、
やっぱここは地獄? 」

牧野が言うと、

「地獄だったら、
こんなにのんびりさせてくれないでしょ」

向井が笑った。

「牧野君は食事も残さず食べて、
よく寝てるじゃない。
これで地獄だったら、
天国ってどんなだろうね? 」

新田もケラケラと笑った。

「お前ら馬鹿にしてんだろ」

牧野はムスッとすると、
部屋を出て行った。


――――――――


三人が冥界にきて通された部屋は、
死神と呼ばれる者たちが訓練をしている、
トレーニングルームの奥にある、
広い一室だった。

そこからドアを挟んだ続き部屋で、
三人は一ヶ月半、
一緒に暮らすことになるらしい。

だだっ広い部屋には、
ベッドとテーブルが置かれ、
あとは何もない。

窓もないし、
だからと言って息苦しいほど、
密閉された空間でもないので、
彼らはそれぞれ好きなことをしていた。

死神に言えば本も用意してくれるので、
新田は雑誌を読み、
牧野は漫画にゲーム三昧、
向井も音楽を聴いて、
時間を過ごしていた。

死んだらどうなるんだろうと思っていたが、
生きている時とあまり変わらないことに、
向井は驚いていた。
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