第2話 特例とは
文字数 1,218文字
「で、田所さんはどうするんですか? 」
「どうしようかな。
出来れば新しい人生送りたいんだけど、
冥界にいると先が見えちゃうだろう。
自由のない洗脳未来に、
生まれ変わるのもなぁと思ってさ」
「俺たちの場合は、
任務終了ですぐに記憶が消されて、
再生されますからね」
「記憶は無くなっても、
この魂は自分なわけで愛おしいのさ。
それが辛い思いをするのは不憫なんだよね。
自分を知っているから、
徳を積めるとも思えないし」
田所がため息をついて言った。
魂の質は決まっているので、
徳を積めば神や仏に近づけるのかと言えば、
そうでもない。
過去も未来もこの魂は、
自分とそう遠くない性質であり、
とんとん拍子に徳が積めるわけもない。
徳を積み上げている途中で、
魂の寿命が来れば、
ジエンド。
そこで焼却されてしまう。
特例の場合は、
他の魂のような手続きが不要で、
冥王に直結で運ばれる。
なのですぐにでも、
生まれ変わることを知っている田所には、
悩みどころなのだろう。
「もうしばらく考えてから決めるよ」
「そうですね」
そんな話をしていると、
通りの向こうから、
牧野が怒りながらやってきた。
「終わったのかな? 」
「終わったのかじゃねえよ。
そんなところで駄弁ってんなら、
少しは手伝えよ。
若いってだけでこんな仕事させやがって。
部署替えしてもらいて~」
二十一歳の牧野は、
若者たちの抗争で二年前に死んでいる。
だが、実際の閻魔帳だと、
交通事故で五十二年後に、
亡くなることになっていた。
何の因果か巻き込まれて死亡しているので、
仕方がない。
田所が持っていた袋から、
菓子パンを牧野に手渡した。
「ほら、これでも食べて落ち着きな。
一応一ヶ月の訓練期間を得て、
配属されるわけだからな。
牧野君には、
除去課が合っているんだろう? 」
「冗談じゃねえよ。
死んだ後も死ぬような目にあって、
毎日毎日除去してんだぞ。
しかもここには、
妖怪もうろついてるじゃないか。
西洋じゃ霊のそばにいるのは、
可愛い妖精だって聞いたぞ」
「そんなわけないでしょ」
向井は笑った。
確かにここには妖怪が多い。
ものに宿るものが殆どだが、
付喪神は霊を使って悪さをするので、
除去課は力のある若者が配置されていた。
「あっちの路地は特に妖怪が多いんだよ」
「ああ、あの辺りは昔、
魔除けの逆柱があったらしい。
それが長い年月で建造物が壊され、
建て替えられ、
妖怪化してるんですよ。
これも人間のせいだから仕方がないね。
講義で勉強させられたでしょう」
「俺は勉強なんてものは大っ嫌いなんだよ。
死んだ後にまでさせられるなんて」
牧野は憤慨やるかたない様子で、
菓子パンの袋を破りかぶりついた。
一ヶ月の訓練期間には、
特例がかかわる事例の講義も行われる。
霊が集まる場所には、
妖怪が出没することも多い。
奴らのイタズラには、
霊を利用したり、
人の生き死ににも関係するので、
重要課題として叩き込まれる。
さらにサイコパスなどの霊魂は、
再生不可なので、
見つけたらすぐにも、
除去課が消滅させることになっていた。
「どうしようかな。
出来れば新しい人生送りたいんだけど、
冥界にいると先が見えちゃうだろう。
自由のない洗脳未来に、
生まれ変わるのもなぁと思ってさ」
「俺たちの場合は、
任務終了ですぐに記憶が消されて、
再生されますからね」
「記憶は無くなっても、
この魂は自分なわけで愛おしいのさ。
それが辛い思いをするのは不憫なんだよね。
自分を知っているから、
徳を積めるとも思えないし」
田所がため息をついて言った。
魂の質は決まっているので、
徳を積めば神や仏に近づけるのかと言えば、
そうでもない。
過去も未来もこの魂は、
自分とそう遠くない性質であり、
とんとん拍子に徳が積めるわけもない。
徳を積み上げている途中で、
魂の寿命が来れば、
ジエンド。
そこで焼却されてしまう。
特例の場合は、
他の魂のような手続きが不要で、
冥王に直結で運ばれる。
なのですぐにでも、
生まれ変わることを知っている田所には、
悩みどころなのだろう。
「もうしばらく考えてから決めるよ」
「そうですね」
そんな話をしていると、
通りの向こうから、
牧野が怒りながらやってきた。
「終わったのかな? 」
「終わったのかじゃねえよ。
そんなところで駄弁ってんなら、
少しは手伝えよ。
若いってだけでこんな仕事させやがって。
部署替えしてもらいて~」
二十一歳の牧野は、
若者たちの抗争で二年前に死んでいる。
だが、実際の閻魔帳だと、
交通事故で五十二年後に、
亡くなることになっていた。
何の因果か巻き込まれて死亡しているので、
仕方がない。
田所が持っていた袋から、
菓子パンを牧野に手渡した。
「ほら、これでも食べて落ち着きな。
一応一ヶ月の訓練期間を得て、
配属されるわけだからな。
牧野君には、
除去課が合っているんだろう? 」
「冗談じゃねえよ。
死んだ後も死ぬような目にあって、
毎日毎日除去してんだぞ。
しかもここには、
妖怪もうろついてるじゃないか。
西洋じゃ霊のそばにいるのは、
可愛い妖精だって聞いたぞ」
「そんなわけないでしょ」
向井は笑った。
確かにここには妖怪が多い。
ものに宿るものが殆どだが、
付喪神は霊を使って悪さをするので、
除去課は力のある若者が配置されていた。
「あっちの路地は特に妖怪が多いんだよ」
「ああ、あの辺りは昔、
魔除けの逆柱があったらしい。
それが長い年月で建造物が壊され、
建て替えられ、
妖怪化してるんですよ。
これも人間のせいだから仕方がないね。
講義で勉強させられたでしょう」
「俺は勉強なんてものは大っ嫌いなんだよ。
死んだ後にまでさせられるなんて」
牧野は憤慨やるかたない様子で、
菓子パンの袋を破りかぶりついた。
一ヶ月の訓練期間には、
特例がかかわる事例の講義も行われる。
霊が集まる場所には、
妖怪が出没することも多い。
奴らのイタズラには、
霊を利用したり、
人の生き死ににも関係するので、
重要課題として叩き込まれる。
さらにサイコパスなどの霊魂は、
再生不可なので、
見つけたらすぐにも、
除去課が消滅させることになっていた。
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