第28話 ダンサーオーデション

文字数 1,043文字

翌日向井は、
死神課のカウンターにいた。

ダンサーオーデションが入ったので、
死神の貸し出し申請に来ていた。

かなり待たせてしまったが、
やっと本人希望の、
舞台オーデションを見つけた。

ダンサーが集まる公園で、
脇で一緒になって練習している姿を、
向井も見てきたので、
未練なく来世に進んでもらいたい。

出来レースではないので、
オーデションに受かれば、
大舞台で踊れる。

だが、ここで問題が一つ。
それが、
憑依できる死神がいるのかだ。

死神能力が試される、
案件の一つになるので、
選ばれた死神にとっても責任重大だ。


そもそも死神は、
冥王から作られているので、
基本、冥王好みの死神になる。

前冥王は可愛い姿の死神に、
偏りがあったそうだ。

当時は、
今のような体制ではなかったので、
死神は冥界で、
働ければいいという感じに、
数が揃えられていた。

現冥王はその組織を作り直したので、
死神も可愛い系、
美形、スポーツマン系など、
二十代~三十代を中心に揃え、
冥界と人間界で、
動きやすい見た目に変えた。

漫画好きの冥王らしい、
キャラクターが多いのかもしれない。


向井が、
カウンターに寄りかかって待っていると、

「向井さん、今空いてる死神だと、
このあたりですね」

死神課の職員がきて、
端末を見せた。

セイもまた死神なのだが、
デスクワーク専門なので、
冥界での仕事しかしない。

「えっ? これしかいないの? 」

向井が驚くと、

「昨日倉田さんが来てたでしょ。
あれ、
除去課のヘルプに使う、
死神の申請許可にきてたんですよ」

「あぁ、そうなんだ。
じゃあ、冥王に言って、
もう少し死神増やしてもらおうかな」

「あぁ、それダメだと思いますよ」

「なんで? 」

「この前も新田さんがその話をしたら、
禿げるからヤダって言ったそうですから」

「肝が小さいなぁ」

「で、
今回はどんなのが必要なんですか?  
男? 女? 職人系? アート系? 」

「男性のダンサーなんだけど、
憑依後、身体が馴染めばOKだから。
過去にダンス経験のある死神はいる? 」

「ダンスね~えっと……フラダンスと、
日舞の経験あるのがいますよ。
あっ、でも男性なんですよね。
そうなると………
社交ダンスで大会に出たものがいます」

「社交ダンスか………」

「探しているダンスって、
どんな種類なんです? 」

「ストリートっていうの? 
ヒップホップとかハウスダンスとか」

「ストリートダンス!? 
僕、バトルが好きなんですよね~♪  
休憩室の大画面で見てると、
迫力あってカッコいいんですよ!! 」

ここにもTV撤去反対派がいるのか。

向井は下を向いて笑った。
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