95 リズムに合わせた草奈伎神社・後篇

文字数 1,907文字



 神話で、10代崇神天皇の時代に高天原の日神が祟る。11代垂仁天皇の時代に初代斎王の倭姫が神宮に神代(カムシロ)の神鏡を遷す。神話で神剣の遷座は書かれない。
 12代景行天皇の時代に倭姫が倭建にクサナギの剣を授ける。
 内宮は、じつは41代持統天皇の、または42代文武天皇の時代に建つ。神話を創り、神道を整え、神社を整え、神統を整えるため、天武系皇統の正当(正統)を表すため、高天原の日神とともに建てられた神社。
 外宮は、じつは神話で書かれない。当然、祭神も出ない。外宮の宮伝で、477年に21代雄略天皇が高天原の日神の神託で建てたと伝える。御饌(贄)の神様として祭神の出自は3社。丹後国与謝郡の籠神社(真名井神社)。加佐郡、または竹野郡の奈具神社(論社2社)。丹波郡の比沼麻奈為神社の分祀という。いずれ丹後国の出自。

 天武系皇統が絶え、天智系皇統が復する。天武系皇統の皇祖神の高天原の日神を排し、桓武天皇はハタ族の推す八幡神を天智系皇統の皇祖神とする。天武系皇統の大和国を離れ、ハタ族の推す山城国を天智系皇統の宮所(宮都)とする。

 781年、富士山の噴火と父の光仁天皇の死。
 祟り(自然災害)は天子の不徳で齎されるか、人の恨み、妬み、嫉み、鬼の穢れで齎されるかわからないけれど、桓武天皇の時代も祟りが続く。
 784年、山城国へ宮所(宮都)を遷す。長岡京。飢饉、疫病が続き、近親の変死が続く。794年、改めて宮所を遷す。平安京。
 八幡神が護ってくれない。なにも言ってくれない。
 天武天皇の死因が過ったかもしれない。
 桓武天皇は高天原の日神に奉じる。外宮に御饌の神様を祀る。ウガメ(ウガヒメ)。一説に外宮は桓武天皇が建てたという。祟り神に饌(ソナエモノ)、贄を献じる。外宮の祭神は4座。随神3座は出自不明。主神のウガメが逃げないように、三方を塞ぐ。
 そして804年、桓武天皇は石上神宮の神宝献上を強いる。天武天皇に肖り、神剣を手にいれる。ミカヅチヲの佩剣。
 だけど。806年、桓武天皇は悩みまくり、心労死。



 イソ族(磯部)は全国各地の贄(魚貝)を献じる、漁撈を生業とする海人族。
 海人族は、ほかに海運を生業とするアマ族(海部)があり、玄海のアヅミ族の、北海(日本海)のミナカタヌシさんの一族、南海(南太平洋)のヲハリ族などがある。色々なアマ族が全国各地の海域で鬩ぎあう。

 かつて東海道は大和国、伊勢国から伊勢湾の海路で三河国へと進んだ。東の海の道。のちに鈴鹿山に鈴鹿坂(鈴鹿峠)ができ、大和国、伊賀国、伊勢国から陸路で尾張国、三河国へと進む。伊勢湾で海運を生業としたアマ族は廃業。海賊や、鈴鹿坂で山賊を開業。
 伊勢海(伊勢湾)の海人族は志摩半島、知多半島、渥美半島、そして島々にバラバラに住む。のちに大間国生神社の祭神の後裔一族、つまり外宮に奉じる一族が伊勢海の海人族をまとめる。伊勢国を治める。
 高天原の日神に御饌(贄)の神様を献じた一族。イソのクモ衆。

『サダヒコ様の治めるイセの国は、国ツ神が争ってる。毎日だ。蕃神が襲ってくる。毎日だ。領地が欲しいからな。争うな、襲うなと言えば争わないのか、襲わないのか。見はる神人は、平気でうらぎる。神威を得たいからな。卑怯と言えるのか。イヅモの神人にうらぎられ、オオクニ様も泣いてた。オレも泣いてた』

「昔、イセヒコが独り言ちてた。クマノも、イヅモのクマノも、クマソの地も、い、色々な蕃神が流れつくから、な」
 和歌山県もエビスを祀る神社が多い。前作の島根旅行で顕彰碑のあった水門吹上神社、名草宮といわれた日前神宮国懸神宮の摂社の市戎神社、そして[ザ・コーヴ]で有名になった和歌山県東牟婁郡太地町の恵比寿神社。
 青潮(黒潮の分流の対馬海流)で島根半島へと、黒潮で紀伊半島へと大陸、朝鮮半島から、海の彼方から物や人が流れてくる。異なる文化や新しい技術を齎す異装の神様がやってくる。隣の国の神様(蕃神)や客神がやってくる。



 ついで。いつまでも内宮の飯を作ってられるか、ということで。
 内宮に奉じる宇治六郷、外宮に奉じる山田三方は戦った。宇治山田合戦。室町時代から江戸時代まで続く。1889年、やっと対立関係の宇治と山田が合わさり、宇治山田町。1906年に宇治山田市、1955年に伊勢市となる。
 国ツ神は戦を好まない。好まなくても神人は神様のために戦う。これからはまずは外宮に頭を下げろや、ということで。外宮先祭、外宮先拝。

 ついでのついで。戦場となった興玉の森に建つ宇治山田神社。店長(興玉神)を祀る。神話で、店長は伊勢国の狹長田(サナダ)の五十鈴川の川上に住む。ゆえにサダヒコ。
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