68 My Fair Lady

文字数 1,021文字



 天を見あげる。
 グデグデな男神の二日酔を醒ますため。天上で物語の展開を司り、物語の主役を導く神様を、見おろす神様を欺くため、旅程を変える。
 ニウヒメさん、もうちょっとだけ、待ってほしい。
 須佐之男神社から金山駅まで徒歩40分。金山駅から青山駅まで名鉄名古屋本線、常滑線経由の名鉄特急で35分、知多半島の内海駅まで名鉄河和線、知多新線で25分。合計60分。乗換を含め、約1.5時間。二日酔が醒めたころ、徒歩20分の知多半島のつぶて浦から紀伊半島の二見浦へとフェリーに乗らず、翔ぶ。昨晩のカゲヒコさんの話で思いついたプラン。
 二見浦の対岸に鳥居が建ち、鳥居の下に巨石がある。伊勢国の神様が対岸へ向かって投げあい、落ちた巨石がつぶて浦になったという。稲佐の浜も、ミナカタヌシさんとミカヅチヲが投げあったつぶて岩がある。神様は石投(つぶてうち)が好き。
「まさか伊勢湾を翔ぶと思わない」担いだクエビコさんに言う。
「た、たしかに、笑える。もしかしたら、は、背後からの一撃に、なる」
「……ツクヨミ様。ワタクシたちの二日酔も、2時間もあれば醒めるでしょう」
「はい、元・天ツ神の神威と威信にかけまして」
「姉神のために全力をかけて」
「ウン、嫁神に愛をこめて」
 両隣のスサノヲさんとワカフツヌシさんが剣の柄頭で殴る。
 たのきんトリオというよりもレッツゴー三匹。
「よし、レッツゴー」ビシッと指す。
 オオクニヌシさんが眼鏡のブリッジを左手で押さえ、クイと上げる。
「ツクヨミ様、イセの国はこっちです」口から外した右手で逆のほうを指す。指す。
「……わ、わかってる」振りかえったから、逆だ。
「ツーちゃんも、オオクニ様がいないと、ダメダメだね」
「な、なるほど。ツクヨミは、今時の国ツ大神(オオカミ)、だ」
「どうせ私はなにも考えない大女将(オオオカミ)だから」
「い、いや、違う。オレは国ツ神を、国ツ軍を率いる国ツ大神と言ってる。ツクヨミは、つねに正しい』
「……私はなにも考えない、とクエビコさんは言ってる」
「ち、違う。ちゃんと考えろ。……い、いや、違う。ツクヨミはちゃんと考えなくても、つねに正しい、と……」
「もう、いい」

***

[武神彼氏2 もうにどと神様と恋に堕ちない]の2部は終わり、3部に続きます。御感想、御意見を戴けると作者も、ツクヨミも喜びます。
 2023年は卯年。作者も、ツクヨミも跳ねます。
 では、次回の続く3部で。進まない小説も、わけのわからない論説も続く。
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