89 メリケンサックとカッパ

文字数 1,047文字



 九州中域、北域から山陰道を経て紀ノ川(吉野川)へと移ったサンカ(山家/山窩)。当然だけど出雲国(島根県)も、いや、隣の伯耆国(鳥取県)もカッパの神話がある。

 日野川のカッパ(カワコ)は球磨川の九千坊の後裔。九千坊は長江から球磨川へと移ったカッパの頭。9000匹(人)のカッパを率い、悪業を行い、熊本藩初代藩主の加藤清正に下命で猿に襲われた。筑後川に移り、さらに後裔は日野川に移った。日野川のカッパは、祖先からの忌まわしき血統を咒ったという。
 隼人も熊曾も、蝦夷も、鬼も、カッパも財宝(棲む地)を奪われる。財宝を育ててくれた翁と嫗にあげる桃太郎。
 本当に悪業で得た財宝だろうか。本当に悪業を行なっただろうか。財宝を奪うため、雉が嘯く。財宝を奪うため、猿が襲い、桃太郎が討ち、逃げたら犬が追う。ゆえにカッパは猿が嫌い。雉も犬も嫌い。桃太郎はもっと嫌い。
 きっと九千坊の後裔も悪業を行う。後裔は言いつづけられる。
 なにも知らない後裔は、祖先を咒う。

 清正は暴れ川の球磨川の治水工事で有名。梅雨時期は九州中域、北域から山陰地方へと長雨、豪雨が移る。2016年に起きた熊本地震も豪雨による2次災害が大きい。
 水害は水神(川神)のミサキ神のカッパの悪業となる。



 斐伊川の川上にある島根県仁多郡奥出雲町。砂鉄が採れ、タタラ製鉄が行われた。
 隣は鳥取県日野郡日南町。日野川の川上に当る。日野川は鳥取県西域を流れ、美保湾から北海(日本海)へと流れでる。出雲国と伯耆国の国堺の鳥髪山(船通山)が分水界となり、出雲国の斐伊川、伯耆国の日野川へ流れる。かつて日野川は簸之川。日野川も鉄穴流しがあり、一説にヤマタノオロチが棲むヒの川という。
 鉄穴流しで川底に大量の土砂が溜まり、長雨、豪雨で水害を起こす。カッパの悪業となり、討たれる。カッパは鍛冶族とまちがわれる。ゆえにカッパは鉄が嫌い。

『げ、現実は、史実と、事実と異なる。オレは動けない』クエビコさんが言った。

『いいんじゃないデスカ。偶然が重なることは、よくあることデ、事実は小説よりも奇なりデス』店頭が言った。

『河童の森も避難場として整備を行います』誰が言ったか。

『……いま、事実を明かす。私が住んでる、ここは東京都でない。いまだ祖父、親戚にウソをついてる。ここは東京都の隣県、埼玉県。浦和市、大宮市、与野市、のちに岩槻市が合わさった、さいたま市』私が言った。

 悪業と言いがかれ、嘯かれ、襲われ、討たれ、追われる。
 事実を知ったカッパはメリケンサックを付ける。
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