91 ハッスル音頭で葵祭・後篇

文字数 1,451文字



 賀茂祭は祟る賀茂大神を鎮める祭。だけど祟り神に仕える巫が天皇に傅く。
 賀茂祭は賀茂大神へ生贄を献じた祭。だけど生贄の斎王代が天皇からの勅使代に傅く。
「ら、雷神を遣わし、国を譲らせる。イヅモもミカヅチヲを遣わし、譲らせる。ヤマシロも雷神を遣わし、譲らせる。天ツ神は雷神を遣わし、古の神の地を譲らせる。笑える。なぜか験を、い、いや、願を立てる。蕃神に縋る」
「賀茂祭は山城国の、いや、出雲国の、いやいや、中ツ国の国譲神話だ。古の神、地主神、海や山の持主の神様は、天ツ神に治める地を譲ったわけだ」
「そ、そうだ。さらにホヒのカモ族は、ハタ族に遂われる。カモの祭の祭主は、ハ、ハタ族となる」
 スマホを弄る。八瀬童子。賀茂祭の路頭の儀。やっぱただのパリピーか。
「い、古の神は、蛇神だ。蛇神は、なぜか月神を護る」
 ……蛇神、古の神様、地の神様、火山の神様、地震の神様、と月神。
 月の力は海を引っぱり、潮汐を起こす。月の力は地を引っぱり、地震を起こす。月の力は大きく、地球に影響を与える。虫に影響を与える。概月リズム。
 崖(堺界)の上のポニョか。ワカヒコくんの一言を思いだす。

『ツーちゃんはポニョポニョしてる』抱きつきながら言った。
『えーと、コドモ(幼児体型)ということかな』笑いながら答えた。

 抱きしめた、布で作られた頭を睨む。
「クエビコさんのせいだよね」
「ま、まあ、読者は気づいただろう。伏線回収はゆっくりと、ひっそりと、す、進む」

 崇神天皇はオオモノヌシ(トミビコさん)の祟り。神話でオオモノヌシは蛇神という。天武天皇は八岐大蛇の佩剣の祟り。八岐大蛇は蛇神。雷神を遣わし、蛇神を鎮めなければならない。鎮めなければ、蛇神の棲んだ地は治められない。
「平城京から長岡京へと遷るとき、雷神を遣わし、蛇神を鎮めなかった。だから長岡京から平安京へと遷るとき、雷神を遣わし、蛇神を鎮めたわけか。藤原京(新益京)は、たしか持統天皇が地鎮祭を行った。天武天皇の死がきっかけ」
「そ、そうだ。地鎮(トコシズメ)の儀。さらに噴火も地震も、月神が、か、関わる」
「ムー(ン)な話の伏線回収と、新たな伏線」
 710年に平城京遷都も、なぜかすぐに遷らなかった。いや、すぐに遷れなかった。一説に716年のイヅモ族の出雲国造神賀詞があり、745年に遷れたという。天武系皇統は天武天皇の死因に苦しみつづけた。

『しょ、聖武は、父は7歳で死別、母は心の病、己も病弱、ま、まわりは争い(政争)と災い(天災)。人を信じられず、祟り神に、お、おびえる。聖武の養父は、イ、イソの社(伊勢神宮)に奉じてる。笑える』



 賀茂祭の起源は、じつはわからない。雨神(水神)を誘う雷神(賀茂大神)の祟りが定説。ほかにタタラ製鉄や鉄穴流しによる鴨川の川神(水神)の祟り。水害。鴨川は平安京の水源であり、疫病もあったという。
 賀茂別雷神社の社伝で、賀茂大神が降り立った山は賀茂山(神山)と伝える。岩屋山金光峯寺の神降窟とともに鴨川の水源といわれる貴船川の川神の祟り。旱害。農耕(稲作)に必要な水量がたりない。貴船山の山神を賀茂山に降ろし、雨を降らせる。
 賀茂山の別名は分土山(別雷山)。松尾山の古名。雨神を誘う雷神の棲む山。分水堺。
 賀茂別雷神社と賀茂御祖神社の賀茂二社はなにを祀ってるかわからない。賀茂祭はなにを祭ってるかわからない。なにも思わない、考えない。
 なにも思わない、考えないホヒのカモ族。レッツ世なおし。
 まあ、楽しいからいーんじゃない。やっぱただのパリピーか。
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