101 ミカヅチヲの佩剣のC&C・後篇

文字数 2,516文字



 ミカヅチヲの佩剣は、神話で出雲国(葦原ノ中ツ国)を、タカクラジさんに授けて大和国(中ツ国)を、史話で東国を平らげた平国(クニムケ)の剣。地上で順わない国ツ神や蝦夷を負かした勝者の剣。地下で暴れる蛇や龍や鯰を押さえつけた剣。天意に、天ツ神に順わないモノを斬り殺す。まさに神剣。
 神話で、高天原を逐われ、常陸国(茨城県)の大甕山に降りた星神カガセヲ。高天原の地上説のひとつ、常陸国。別名は日高見国。鹿島神宮の宮伝で、雷神ミカヅチヲは出雲国平国の前に、古の戦の前に常陸国に降り、カガセヲを鎮めたと伝える。
 かつて栃木県と群馬県、茨城県の一部、埼玉県の一部に広がり、東国(東日本)を治めた毛野国。カガセヲが治めた国。祀る星宮神社は栃木県に多い。
 カガセヲの別名は甕星(ミカボシ)の神。甕形の星で流星、または彗星。じつは流星と彗星は異なる。まあ、神話を考えると流星か。夜天を昼空に変えるほどの明るい流星もあり、火球と呼ばれる。日神のような星神。天ツ神の畏れる星神。

『あ、天ツ神は順わぬ星神を畏れた』

『常陸国に、すでにカガセヲが降りてた。順わない元・天ツ神』
『そ、そうだ。星神は、鬼の崇める鬼神と、化す。う、艮の金神』

 だけどミカヅチヲは偽物の雷神(噴火雷の神格化)。雷電神社は群馬県や栃木県に多いけれど、ミカヅチヲを祀らない。本物の雷神を祀る。雷神神社の本社はミカヅチヲの祀る鹿島神宮でない。べつにある。鹿島神宮に奉じたミカヅチヲの佩剣も偽物である。本物はタカクラジさんに授け、石上神宮にある。ミカヅチヲは本物の雷神でなければ、鹿島神宮の本来の祭神でない。ゆえに本物の佩剣もない。
 じつは鹿島神宮の本来の祭神は地主神の香島神。本物も、偽物も雷神でない。茨城県に火山はない。国譲神話や征東征夷の史話の正当を曰うため創られた神様。火山の神様カガヒコの血に生じたミカヅチヲ。人のいる葦原ノ中ツ国と黄泉神の棲む黄泉国の、国堺の塞神はオーグメントで偽物の雷神と変わる。では、火山のない茨城県で偽物の雷神と変わるのか。常陸国は、もとは毛野国南域。毛野国北域は、じつは火山がある。

 ついで。高天原の地上説と同じく日高見国も諸説がある。飛騨国(岐阜県北域の斐陀国)、武蔵国高麗郡高麗郷日高村、豊後国日田郡日田郷日田村(日高郡日高郷日田村)、さらにミヤヒメが倭建とともに暮らした愛智郡成海郷氷上村。



 毛野国北域(栃木県と群馬県)は火山がある。
 黒潮で南洋諸島(東南アジア)、南西諸島を経て九州南域に流れついた人。青潮(黒潮の分流の対馬海流)で南洋諸島、台湾島、五島列島を経て九州西域に流れついた人。合わさって肥後国球磨郡から大隅国曽於(囎唹)郡までの熊曾国ができる。クマ国とソオ国でクマ・ソ国。鬼界カルデラの噴火で紀伊半島の熊野国に移り住む。さらに一部の人は黒潮で伊豆半島を経て房総半島に流れつき、毛野国北域に移り住む。火山とともに生きた人。
 毛野国南域は火山がない。だから噴火雷も知らない。
 朝鮮半島、対馬島、壱岐島を経て九州北域に流れついた人。火山を逃れ、瀬戸内海と紀伊水道を渡り、紀伊半島に移り、火山のない大和国ができる。さらに一部の人は遂われ、伊豆半島を経て房総半島に流れつき、毛野国南域に移り住む。
[フジ]の語源は常陸国の神話にある。福慈(フクジ)神という美しい水神の棲む山が福慈山。富士山。西の厳しい福慈神と、東の優しい筑波神。噴火のある富士山と、噴火のない筑波山。ゆえに筑波山の山麓にたくさんの人が移り住む。

 毛野国北域は落雷が多いので雷神を祀る。わかる。火山があるのに火山の神様を祀らない。わからない。代わり星神を祀る。なんでだろうか。明るい流星が見られたので星神を祀ったんだろうか。神話でカガセヲは茨城県の大甕山に降りたとある。わからない。

 神話で、天父神イザナギは地母神イザナミさまの産んだ火山の神様カガヒコをヲハバリの剣で斬り殺す。カガヒコの血に生じた偽物の雷神、ヲハバリの剣の神様の子神ミカヅチヲが星神カガセヲを鎮める。ミカヅチヲの佩剣は、神話で出雲国を、タカクラジさんに授けて大和国を、史話で東国を平らげる。平国の剣。地上で順わない国ツ神や蝦夷を負かした勝者の剣。地下で暴れる蛇や龍や鯰を押さえつけた剣。天意に、天ツ神に順わないモノを斬り殺す。まさに神剣。



 神代三剣はミカヅチヲの佩剣、倭建の佩びたクサナギの剣、そしてスサノヲさんの佩びたハバキリの剣。クサナギの剣はヲハバリの剣、ヲハリ族の長の佩剣(ややこしいので神話の神剣という)。
 そして。ミカヅチヲの佩剣は鹿島神宮にない。神話の神剣は、ヲハバリの剣は斐伊神社になく、クサナギの剣(ヲハリ族の長の佩剣)は熱田神宮にない。ミカヅチヲの佩剣とクサナギの剣はニギハヤヒの後裔一族が奉じる石上神宮にある。

『し、神剣も、ミカヅチヲの佩剣も高天原から葦原ノ中ツ国へと降りる。か、下賜だ。ミカヅチヲの佩剣は、崇神によりニギハヤヒの後裔一族が賜る。イ、イソノカミの社に奉じられる。神剣は、天武によりホノアカリの後裔の、ヲ、ヲハリ族が賜る。アユチの社に奉じられる。神剣はホノアカリの佩剣と、か、考える。高天原の日神に座を奪われた、天運(強い神威)のない葦原の日神、だ』

 熱田神宮にあるのはホノアカリ、または同神のニギハヤヒの佩剣。盗まれたり、海に沈んだりで行方不明。とりあえず神話の神剣のレプリカ(偽物)がある。
 じつは石上神宮にハバキリの剣もある。本物か偽物かわからない。あとでスサノヲさんに訊こう。

 ついで。
 一説に斐伊神社にあるのはムラクモの剣という。神話にある八岐大蛇退治神話や国譲神話は出雲国の神話にない。つまり神話のために建てられた斐伊神社。
 ヲハバリの剣の神様を祀る。のちに八岐大蛇退治神話に合わせてスサノヲさんとイナダヒメを祀る。同社坐斐伊波夜比古(樋速夜比古)神社にカガヒコと、ミカヅチヲとともに生じた溶岩流(マグマ)、火砕流、土石流の神格化の甕速日神、樋速日神(斐伊波夜比古/樋速夜比古)を祀る。なぜかミカヅチヲは祀らない。

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