61 男神の迎え酒

文字数 761文字



 隣の男神のへやで騒ぐ声。迎え酒で宴会中。ワカヒコくんがかわいそう。
 迎え酒は、二日酔の原因のアセトアルデヒドの濃度が薄くなり、利尿作用でアセトアルデヒドを体外に出して良い、と言われる。
 じつは痛覚を鈍らせ、二日酔の症状の頭痛がなくなった気になっただけ。迎え酒で、アセトアルデヒドの濃度はさらに濃くなり、症状はさらに悪くなる。まあ、男神達は呑むキッカケがあればいい。呑めればいい。

 隣の騒ぐ声を聞きながらスマホを弄る。
 美保神社の祭神ミホのススヒコは、オオクニヌシさんと義親子の契を交わし、出雲国に移る。
 なんで実親子が義親子の契を交わすのか。
 ……そうだ。
 きっと沼河の姫も政略結婚だ。きっとミナカタヌシさんは沼河の姫の連子だ。
 …………どうでもいい。
 なんで私が眼鏡妻帯ヤンデレ神のイイワケを考えなければならないのか。
「どうでもいい。だって……」独り言ちる。
「ツ、ツクヨミ、どうした。顔が、ヘ、ヘンだぞ」
「なんでもない」にやけた顔を直すけれど、直らない。
「よ、よだれが出てる。お、女子(オナゴ)がみっともない。は、早く拭け」
 鏡を見る。出てる。口を拭い、大きく安堵の溜息をつく。
 もう、眼鏡妻帯ヤンデレ神に振りまわされないから。もう、(気分は)オトナの女だから。もう、(脳内で)恋愛は経験済だから。
「オトナの女は新しい恋愛にレッツゴー」
「レ、レッツゴー……」
「パズーは非眼鏡男子。ちょいワルなダンディ」
「ちょいワルな……。ツクヨミ、どうした。オレが眠ったあと、さ、酒を呑んでたのか」
「私は呑めません。ピチピチの19歳(2018年現在)なので」
「ピ、ピチピチ……。今時のキイの女子(オナゴ)も、あまり言わない」
「そうかな。東京(じつは埼玉)の女子(ジョシ)はよく言うよ」
「う、うわべだけのムサシの、オ、女子(オナゴ)」
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