57 泪目の男神・後篇

文字数 1,013文字



 出雲国の国引神話で、スサノヲさんの玄孫(4世孫)神は領地が狭かったので、杭を打ち、網で高志国の埼(能登半島の土地)を美保の崎(地蔵崎)に、新羅国の埼(朝鮮半島の土地)を支豆支の埼(日御碕)に引いた。つまり新羅国と高志国を出雲国の領地とした。杭が角盤山と三瓶山(佐毘売山)となった。
 国を引く前の原・出雲国は、昔の出雲国嶋根郡。
 じつは夜見の嶋(夜見の浜/弓浜半島)と、薗の長浜(稲佐の浜/出雲平野)で日本列島と結ばれた今の島根半島は、大昔は島だった。

 島根半島の西端の日御碕に日御碕神社、東端の美保崎に美保神社。ともにカムド族の奉じる神社。宍道湖と中海の彼岸にある嶋根郡。
 此岸の意宇郡に意宇六社。オウ族、のちのホヒ族、イヅモ族の奉じる神社。
 昔の嶋根郡と意宇郡が合わさり、今の島根県の中心の松江市となる。じつは松江という地名の字源語源は諸説があり、わからない。松江という地名もない。全国に松江という地名はあるけれど、ひとつに和歌山県和歌山市松江(紀伊国名草郡松江村)がある。字源語源は松林に囲まれた入江で松江。出雲国(島根県)と紀伊国(和歌山県)は、やはり似た地名が多い。

 イザナミさまを祀る揖夜神社も意宇六社の1社。ほんとうの祭神はミホメ。近所に根ノ国に通じる黄泉比良坂がある。黄泉比良坂から、宍道湖、中海の底を通り、嶋根の島(底ノ国・根ノ国・常夜ノ国・殯ノ国・黄泉国)へと渡る。黄泉国へ行くには、夜見の嶋、薗の長浜を通らなければならない。夜見の嶋に建つ爾佐神社。

『よ、夜見ノ国を通らなければならない。さ、さっきの爾佐神社がある処だ。よ、夜見の国を護る神が、ツクヨミだ。そ、そういえば、日御碕神社の末社に月読神社がある。やはり社を、隠してる』

 出雲大社は、創建当時は出雲郡杵築郷に建つ、カムド族の奉じた杵築神社。薗の長浜に建つ、小さな無名な神社。カムド族の奉じた時の祭神はわからない。
 867年に熊野大社と同じ神階の、大きな杵築大社となり、1871年に有名な出雲大社となる。

『それにキヅキの社は幽宮です。ワタクシを祀る社じゃありません。今のイヅモの国は、ワタクシの治める国であり、国でないんです』

『ホヒ族の奉じるキヅキの社はワタクシの幽宮。鎮められたが正しいです』

 さらに黄泉国の、嶋根の島の西の彼方に、西の海の彼方に阿弥陀佛のいる浄国(極楽浄土)がある。日の沈む、日神の眠る西の海の彼方に、浄国、常世(幽世)がある。
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