69 絵になる熱田皇大神宮・前篇

文字数 3,261文字



「クエビコさん、見て。須佐之男神社くらい、こぢんまりした神社がある。熱田皇大神宮だって。見て見て」担いだクエビコさんにスマホを見せる。
「な、なるほど。こぢんまりした、や、社だ」
 スマホを弄りながら、線路づたいに歩く。マップを見てたら、笑える神社を見つける。熱田神宮と神宮(皇大神宮)に肖って建てた神社だ。



 征東後、倭建命は征東軍の副将の妹の、ヲハリ族の娘のミヤヒメを娶った。そして伊吹山の山神に殺された。山神は神剣を奪えなかった。なぜか倭建命は神剣をミヤヒメに預けてた。神剣はヲハリ族のものとなった。
 神剣がヲハリ族のものとなり、カゲヒコさんが宮中祭祀のためレプリカを作った。



 万世一系の皇統。じつは皇統交替説がある。そして近江国を本拠地とする、蕃国(トナリノクニ)の鍛冶族が皇統交替に関わる。神話で出ないけれど、皇嗣に関わる史話で必ず出る一族。比良山や伊吹山の山神を崇め、白鬚神社に奉じる一族。店長は祭神(比良山の山神)と同神となっただけ。鍛冶族の崇める神様でない。カゲヒコさんも鍛冶の神様として祀っただけ。やっぱ鍛冶族の崇める神様でない。伊吹山の山麓に建つ伊富岐神社、伊夫岐神社の祭神も鍛冶族の崇める神様でない。蕃国の鍛冶族が崇める神様は、山神や鍛冶の神様でなく、蕃神(トナリノクニノカミ)。

 鍛冶族は蕃国の製鉄、鍛冶技術で硬度な鉄剣を鍛える。鍛冶族は武力を高める。

 450の川が流れ入る琵琶湖。鉄分の含んだ水が流れ入る。鉄分の含んだ水が湧き出る琵琶湖。そして湖岸に広がる葦原。
 池沼や湖の葦原は自然浄化作用があり、塩分に耐えて川の下流域から汽水域まで、塩沼にも葦原がある。葦原は水辺の小動物の栖となる。琵琶湖、島根県の宍道湖、長野県の諏訪湖、山梨県の河口湖など。
 鉄分の含んだ水は稲の成長も促す。葦原は田んぼとなる。永遠に稲穂が実る国(豊葦原千五百秋瑞穂國)となる。
 天孫降臨神話で、高天原の日神は天孫神ホノニニギに、神鏡と神璽とともに斎庭の稲穂を授ける。斎庭の稲穂の神勅。ホノニニギの神名は穂が賑々しく稔る。

 葦、萱、菅、薦(菰)、蒲などの水辺に生える草を総じて茅という。代表的茅が葦。鉄分の含んだ水が葦原の根元に固まり、褐鉄鉱石(針鉄鉱石・鱗鉄鉱石)が成る。振ると音が鳴るので鈴石、または鳴石という。かつて琵琶湖の湖畔の、愛知県豊橋市の高師原で見つかった高師小僧が有名。琵琶湖は、じつは三重県から滋賀県へと動いてる。
 鈴石は鹿児島県志布志市、滋賀県蒲生郡日野町、北海道名寄市などで見つかる。
 鈴石は製鉄原料という。鈴石を伊吹山の強い風で鍛える。野ダタラ。多数の野ダタラの製鉄遺跡が見つかる。
 ついで。天ノ岩屋神話で、籠った高天原の日神を誘った店長の妻神。茅纏の矟を振って歌う、舞う。茅を巻いた矛。茅は竹、籐などとともに霊威のある草。
 のちに450の川で、鉄穴流しとタタラ製鉄が始まる。21代雄略天皇から26代継体天皇の時代、近江国の鍛冶族により砂鉄(磁鉄鉱石)が製鉄原料となる。伊吹山の次に高い、金糞岳。金糞はタタラ製鉄でできた鉄くず。
 近江国は、北陸道で結ばれた越前国(高志国)、大陸の製鉄、鍛冶技術で国力を高める。山陰の出雲国、近江国、そして山陽の備中国、播磨国は鉄の国として大国となる。
 鉄を制する国が、中ツ国を制する。
 ついで。
 国内で、あまり採れない鉄鉱石。国外で、オーストラリア、ブラジル、ロシアで世界の6割の鉄鉱石が採れる。埋蔵量。産鉄量はオーストラリア、ブラジル、中国で6割。製鉄量は中国、インド、日本で6割。インドは鉄鉱石の埋蔵量で7位、産鉄量で4位のため、日本は製鉄技術だけが優れる。ロシアは産鉄技術だけが劣るため、世界のなかでややこしい地位となる。2018年現在。鉄を制する国が、世界を制する。



 じつは初代神武天皇と10代崇神天皇は同一で、2代綏靖天皇から9代開化天皇までは非実在という。欠史八代。つまり崇神天皇が初代天皇となる。孫の12代景行天皇の、前后の子の倭建命が伊吹山の山神に殺され、後后の子が13代成務天皇となる。景行天皇に倭建命の征西征東を薦めた建内(武内)宿禰。景行天皇から16代仁徳天皇まで仕えた忠臣。じつは近江国の鍛冶族。竹内文書で有名。
 成務天皇に子はなく、倭建命の子の14代仲哀天皇が嗣ぐ。成務天皇で崇神系皇統は終わる。

 仲哀天皇は前后を娶る。後后に近江国の鍛冶族の娘(のちの神功皇后)を娶り、のちの15代応神天皇が産まれる。前后の子は謀叛を起こし、なぜか大猪に殺される。倭建命を殺した伊吹山の山神も、一説に大猪という。応神系皇統が始まる。
 仲哀天皇は倭建命の実子か、仲哀天皇の前后の子は謀叛を起こしたか、わからない。ミヤヒメが子を産んでたらどうなったか、わからない。
 景行天皇、倭建命、仲哀天皇の血統を継ぎ、正当(正統)な崇神系皇統を嗣ぐ前后の子は殺される。謀叛を起こしたのは神功皇后。だけど史話も、神話も謀叛と書かない。

『しかたがないです。勝てば官軍、負ければ賊軍です』

 応神系皇統は、子のいなかった25代武烈天皇で終わる。

 近江国で生まれ、越前国(高志国)で育った応神天皇の来孫(5世孫)の26代継体天皇が嗣ぐ。継体系皇統が始まる。近江国の鍛冶族の本貫地は越前国角鹿郡(福井県敦賀市)。越前国一宮の氣比神宮が建つ。祭神は蕃神(トナリノクニノカミ)。近所に白城神社が建ち、ウガヤフキアエズを祀る。社伝で祭神は新羅国の神様と伝える。
 一説に伊吹山の山神は八岐大蛇。子の酒呑童子(伊吹童子)の出自も、八岐大蛇と同じ越後国(高志国)。酒呑童子を倒した坂田金時も近江国の鍛冶族。のちに金時は征西へ向かう。だけど道中で熱病で死ぬ。倭建命は酒に酔ったように正気を失い、死ぬ。倭建命も、金時も鍛冶族に叛き、殺される。
 仲哀天皇も近江国の鍛冶族を随え、征西へ向かう。だけど神託に叛き、殺される。
 越前国二宮の劔神社の社伝で、氣比神は仲哀天皇の神霊と伝える。妻に叛き、心を改めた夫の霊。
 継体天皇は近江国の鍛冶族に叛かない。鍛冶族に言われ、先代の武烈天皇の姉を娶り、のちの29代欽明天皇が産まれる。欽明天皇は応神天皇の神霊として八幡神を祀る。氣比神(崇神系皇統の仲哀天皇)と八幡神(応神天皇)を祀る。継体天皇は、辛うじ崇神・応神系皇統を、正当(正統)な皇統を嗣ぐ。
 ついで。劔神社の神官は織田氏。のちに支族が尾張国に移り、織田信長が生まれる。

 そして欽明天皇の子の30代敏達天皇。近江国の鍛冶族の娘を娶り、押坂彦人大兄皇子が産まれる。蘇我氏のいじわるで皇位は嗣げず、子が34代舒明天皇となる。
 崇神・応神・継体系皇統を、正当(正統)な皇統を嗣ぎ、仲哀天皇で始まった敏達天皇、押坂彦人大兄皇子、舒明天皇という近江国の鍛冶族の血統を継ぐ38代天智天皇。鍛冶族に言われないけれど、天智天皇は鉄を求めて近江国滋賀郡の宮所(近江大津宮)へ遷る。
 伊吹山の山神に殺された倭建命の子が仲哀天皇。なんか笑える。



 舒明天皇の后の、天智天皇の母の、35代皇極天皇(重祚で37代斉明天皇)の時代。近江国の国力、鍛冶族の武力は極まる。いじわるな蘇我氏を排する。

 天智天皇が亡くなり、子の大友皇子が後を嗣ぐ前に、弟の大海人皇子が謀叛を起こす。壬申の乱。吉野宮を出立。養父の崇める日神に戦勝祈願を行い、勝つ。後を嗣ぐ。40代天武天皇となる。奈良県高市郡に宮所(飛鳥宮)を遷し、皇親政治、専制政治を行う。近江国の鍛冶族の排する。じつは天武天皇は天智天皇の実弟か、わからない。母の35代皇極天皇は再婚で34代舒明天皇の后となる。一説に天武天皇は皇極天皇の前夫の、高向王の子。
 崇神・応神・継体系皇統を、正当(正統)な皇統を嗣がない、近江国の鍛冶族の血統を継がない天武天皇は考える。古い権威は要らない。鍛冶族の力は要らない。新たな権力は、新たな権威の力を以て成る。
 新たな正当(正統)な権威の力は、なにか。
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