104 神剣の真剣のC&C・前篇

文字数 2,704文字



 神剣の真剣。いや、シンの神剣。シンの神剣は敗者の剣と勝者の剣でなる。
 ミカヅチヲの佩剣は石上神宮にある。神代三剣はミカヅチヲの佩剣、倭建の佩びたクサナギの剣、スサノヲさんの佩びたハバキリの剣。勝者の剣は、神剣はすべて石上神宮にある。本物か偽物かわからないけれど。
 石上神宮は有名な七支刀もある。勝者の剣でないので神剣でない。
 石上神宮はニギハヤヒの後裔一族が奉じる。なぜかニギハヤヒを祀らない。トミビコさんを祀らない登彌神社や等彌神社と同じ。海のサチヒコを祀らない阿陀比売神社と同じ。本当の祭神を隠し、変える。ニギハヤヒも、トミビコさんも、海のサチヒコも、天ツ神に随ってないから、後裔一族はちょっと後ろめたい。神話で、出雲国(葦原ノ中ツ国)を平らげたミカヅチヲ。佩剣を、なぜかニギハヤヒの随神タカクラジさんに授け、ニギハヤヒに渡さず、なぜか神武天皇に渡し、大和国(中ツ国)を平らげる。平国(クニムケ)の剣、勝者の剣。主神はミカヅチヲでなく、授かった剣の神様(布都御魂大神)。のちに神話でニギハヤヒの後裔一族が天ツ軍の、史話で天武天皇が自軍の武具を奉じる。

 調神社と同じ、神社はムラ社会の祭祀場、集会場や避難場以外に、中央集権時代の宮中や神宮に献じる作物や調物(織物)などの貢物の集積庫。まあ、祭祀、集会や避難に必要なモノが置いてるわけだから、倉庫機能はある。
 神殿の建築様式はふたつある。ひとつは貢物を水害や獣害から護る高床倉庫が原形。神宮の神明造。八幡造も同じかんじ。石上神宮も、オオヤマツミを祀る大山祇神社も一族の祭祀場に、倉庫(武具庫)として本殿が建つ。
 もうひとつは出雲大社の大社造。宮殿が原形。山などの神体への拝殿が造られ、のちに神様が降りてきたときに住む宮殿として本殿が建つ。川岸に建てた屋代(ヤシロ)は、どんどんとリッパになって神殿(神様の宮殿)となる。祭神の神威、奉じる一族の権威の象徴。住吉大社の住吉造、春日大社の春日造も似たかんじ。高天原の日神は倉庫に、オオクニヌシさんは宮殿に祀られる。

 自然災害、内乱内戦、飢饉疫病、近親の変死が続いて悩みまくった天智系皇統の2代目の桓武天皇は天武天皇に肖り、石上神宮の神剣を手にいれる。やっぱ武力の象徴の剣、さらに権力の象徴の神剣は欲しい。804年の神宝献上。だけど祟りで返し、806年に心労死。最期も天武天皇に肖る。



 石上神宮は延喜式神名帳で石上坐布留御魂神社。主神の布都御魂大神(ミカヅチヲの佩剣)の神名でない。たしか大和国山辺郡石上(伊曽乃加美)郷の、布留山の山麓に建つ。だけど神体は布留山でなく、布留高庭。庭だ。
 かつて布留高庭と拝殿だけが建つ。1874年に布留高庭に埋まってたものが神体となり、1913年に建てた本殿に祀る。
 スマホを弄る。宮伝で、石上神宮の神体は十種神宝で、神格化が主神の布留御魂大神。1種の剣、2種の鏡、3種の比礼、4種の珠でなる。4種の玉を振りながら、布瑠の神言を唱えると、病人が治り、死人が蘇ると伝える。鎮魂祭の祭具。一説に埋まってた剣は十種神宝の剣で、随神の布都御魂大神(ミカヅチヲの佩剣)という。
 だけど埋まってたモノと宮伝の十種神宝は異なる。十種神宝は盗まれたらしい。剣だけが盗まれなかったんだろうか。どうも実話と伝話(社伝)がビミョーに違う。

 ニギハヤヒは天ツ軍に随わなかったけれど、なぜか随神のタカクラジさんは随う。ミカヅチヲの佩剣を授かり、私を斬り殺し、ニギハヤヒに渡さず、なぜか天ツ軍に渡す。ミカヅチヲの佩剣は後裔一族が賜り、石上神宮に奉じられる。
 別説に十種神宝はニギハヤヒの装具で、剣はニギハヤヒの佩剣という。死んだニギハヤヒを蘇らせるため。死んでないけれど。十種神宝を主神の布留御魂大神として祀り、のちにミカヅチヲの佩剣を賜って随神の布都御魂大神として祀る。

『し、神剣も、ミカヅチヲの佩剣も高天原から葦原ノ中ツ国へと降りる。か、下賜だ。ミカヅチヲの佩剣は、スジン(崇神天皇)によりニギハヤヒの後裔一族が賜る。イ、イソノカミの社(石上神宮)に奉じられる。神剣は、テンム(天武天皇)によりホノアカリの後裔のヲハリ族が賜る。アユチの社(熱田神宮)に奉じられる。神剣はホノアカリの佩剣と、か、考える。高天原の日神に座を奪われた、天運(強い神威)のない葦原の日神、だ』

 ニギハヤヒを蘇らせる鎮魂祭は、のちに新嘗祭に行われる前日祭の神事となる。



 スマホを弄る。Click & Collect。
 4年後の1878年に布留高庭で、……。
「え、スサノヲさんのハバキリの剣も見つかる。なんであるの」
「ツ、ツクヨミ。スサノヲの佩剣も随神で、布都斯魂大神という名で、ほ、奉じられる」
「え、え、クエビコさん、なんでいるの」
「ツ、ツクヨミに、ずっと担がれてる」
「え、え、クエビコさん、なんで喋らなかったの」
「ツ、ツクヨミは、ずっと独り言ちてた。しゃ、喋りづらかった」
「え、え、私、ずっと独り言を喋ってたの」
「ツ、ツクヨミは、ずっと喋ってた。スマホにブツブツと喋ってた。時々、スマホをブンブンと振りまわしてた。……怖かった」
「たぶん繋がりにくかった」

 読者も、私も忘れてたけれど、私達はニギハヤヒとニウヒメさんに遇うため、新大阪駅へ行く道中にアマノクメ組三男神やイヅメに襲われ、名古屋駅下車。呑みすぎてグデグデな男神の二日酔を醒ますため、天上で物語の展開を司り、物語の主役を導く神様を欺くため旅程を変える。名古屋駅から金山駅まで徒歩40分。金山駅から青山駅まで名鉄名古屋本線、常滑線経由の名鉄特急で35分、知多半島の内海駅まで名鉄河和線、知多新線で25分。合計60分。乗換を含め、約1.5時間。徒歩20分の知多半島のつぶて浦から紀伊半島の二見浦へとフェリーに乗らず、翔ぶ。
 呑みすぎてグデグデなスサノヲさんとワカフツヌシさんとカゲヒコさんのレッツゴー三匹を前方に、やっぱグデグデなオオクニヌシさんを後方に見ながら、私とレッツゴー三匹の間を行ったり来たりのワカヒコくんと戯れながら、時々、頭上にフヨフヨと浮いてるキューピーちゃん(スクナヒコさん)をつっつきながら、担いだクエビコさんと話す。
 私にとり名古屋駅から30分(読者にとり1年)くらい、読者にとりあとどのくらいかわからないけれど、私にとり金山駅まであと10分くらいの道中。クエビコさんとの神剣にまつわるエトセトラな話は、いつのまにか私だけのムーな話となる。
 ワカヒコくんは私の独り言に退き、レッツゴー三匹と戯れてる。
 手を振るけれど、気づいてくれない。
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