75 恋する氷上姉子神社

文字数 1,597文字



 倭建命のあと、藤原氏により天智系皇統に復した49代光仁天皇の時代。大伴弟麻呂で始まる征夷大将軍。じつはイヅメの末裔。征東軍は征夷(蝦夷征討)軍となる。征夷大将軍の称号は鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府の長が継ぐ。
 そして最後の長の慶喜が称号を返上。
 明治政府は、神話により神道を整え、伊勢国の神宮により神社を整え、祭神(高天原の日神)により神統を整える。
 国を平らげるための、人を治めるための新たな権威の力。
 空間だけでなく時間までも治める超越な、隠然な存在の威力。人の力が及ぼない絶対な存在の威力。人が畏まる大いなる存在の威力。
 神様の威力、神威の畏怖と畏敬の利用。

『し、神威。高天原を統べ治める日神の神威、だ。己は日神の神威を継ぐゆえ、葦原ノ中ツ国も、永遠に統べ治める正当(正統)な権威もあると、の、曰った』

『前も話したが、社(ヤシロ)は、農耕、稲作の時代にできたムラ社会の集会場だ。と、当然、祀られるのは農地の、護り神。つまり日神』

 人は神威に、神様の威力に畏まる。
 神話の、神宮の、祭神の上書保存。神威を以て正当(正統)な権力者と成る。
 明治政府は、神社合祀を行う。たくさんの神社がまとめられ、たくさんの祭神が高天原の日神と変る。ただし日の神格化でなく、日の本の国の神格化の日神と成る。
 国体のため、多数のサルが必要となる。領地を広げるため、隣のサルの領地を襲うため、多数のサルが必要となる。国民教化による国体強化で国家ができる。



 出雲建征討のキッカケの神話。崇神天皇の神宝検校(神宝献上)。
 出雲国の、カムド族とオウ族の合議統治の時代、交代で国主を務めてた。すでにオウ族はホヒ族となってた。
 当代国主のカムド族の長の不在時、わざと崇神天皇は神宝検校を強いる。国主代行のホヒ族の長は神宝を献じる。怒ったカムド族の長はホヒ族の長を討つ。崇神天皇は謀叛と怒り、カムド族の長を討つ。キッカケで内戦が起き、ホヒ族が勝ち、出雲国を治める。イヅモ族と名のる。
 神宝は出雲国のレガリア。献上により出雲国は帰順国となった。
 神宝は一説に神剣。高天原で賜った剣、またはスサノヲさんが授けた剣という。
 イヅモ族は全国の国主も国を献じるよう、宣う。イヅモ族は国を献じた、と。
「だけど疫病がはやり、献じられた神剣は宮外に遷された。崇神天皇はオオクニヌシさんの祟りと思った。出雲大社を建て、祀りあげた」
「キ、キヅキの社は、西の戦で負けたイヅモの神も、スサノヲも、カミムスヒも祀りあげられた。か、神はなにもしない。人を祟らない。人が思った、考えただけ。オレは西の戦を、イヅモの内戦を知らないが、騙して殺して奪って祟らて祀りあげた。の、脳髄が弱すぎだ。祀りあげてダメならばヤハタの神を崇める。罪悪感で祟り神を信じ、慰霊と殺生の滅罪。あ、悪の権現のヤハタの神を崇める」
「もしかしてクエビコさんは崇めてほしいんだ」
「……オ、オレは……」布で作られた頭が赤くなる。
「ああ、クエビコさんの俗物的自尊心がとーっても愛おしくてたまらない」
 担いだクエビコさんの、布で作られた頭を抱きよせる。

 ムラクモの剣を祀りあげる熱田神宮。クサナギの剣を祀る真清田神社。だけど景行天皇が倭建命を討ったとき、クサナギの剣も熱田神宮で祀りあげられた。
 熱田神宮の前は、勝者の剣のクサナギの剣は氷上姉子神社に奉じられた。かつてミヤヒメが倭建命(ホノアカリ)とともに暮らした愛智郡成海郷氷上(火上/ホノカミ)村。伊勢湾は色々な海人族の領海。岬の先端に航路を、いや、ヲハリ族の領域を知らせるために燎を灯した。ミヤヒメが火明命(ホノアカリ)とともに暮らした火上(ホノカミ)村。
 ミヤヒメは倭建命の死後、クサナギの剣を敗者の剣として祀りあげるため、熱田神宮の土用殿に遷した。
 のちに熱田神宮は尾張造から神明造へと造り変えられ、本殿に2振の神剣が祀られる。
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