78 気になる土佐神社

文字数 2,307文字



 神剣は、じつは熱田神宮から宮中へと返ってた。
 天智天皇が皇位を嗣いだ668年、熱田神宮の神剣は新羅国の佛僧に盗まれた。672年、天智天皇の死、壬申の乱。673年、天武天皇は皇位を嗣ぐ。
 天智天皇の時代に神剣はなかった。
 675年、土佐神社の土佐大神が献じた剣を神剣として宮中に祀った。
「突然と関係のない土佐神社」
「オ、オウのカモ族に、コトシロに関わる社(ヤシロ)、だ」
「わかった。海で鰹を釣ってたら、盗まれた神剣も釣れた」
「ち、違う。神剣はセッツ(摂津国)のヨドの川(淀川)で海に、お、落ちた」
 のちも神剣は長門国の壇ノ浦で海に落ちた。スマホを弄る。やっぱ瀬戸内海。
「わかった。瀬戸内海で鯛を釣ってたら、盗まれた神剣も釣れた。エビスといえば、鯛」
 瀬戸内海の沿岸に多いヒルコ系エビス神を祀る神社。もしかしたらコトシロヌシ系エビス神が流され、ヒルコ系エビス神になったかもしれない。
「ち、違う。トサ(土佐国)の地勢や気候に関わる」
 土佐国の地質、地形、……。スマホを弄る。
 四万十川も砂鉄が採れる。ドジョウ(土壌)か。
「わかった。四万十川でドジョウを釣ってたら、盗まれた神剣も釣れた。ほら、読者も覚えてないドジョウ掬いの伏線」
 八岐大蛇は川に棲む曼い(長い)魚。もしかしたら八岐大蛇はドジョウかもしれない。
「ち、違う。伏線はドジョウ掬いでない」
「ちッ。違ったか」
「ツ、ツクヨミ。舌打は良くない」
 
 ついで。
 ドジョウの語源は泥津魚(泥の魚)。漢字で鯲、または鰌。字源は、[鯲]のツクリの[於]は[淤]の略字。もとは[烏]と同じく、カラスの象形文字の[於]。水がカラスのように黒くなり、[淤]。つまりどろ。おり。ふさがる。とどこおる。[鰌]のツクリの[酋]はミミズというけれど、[酋]の字源は醸した酒壺。ミミズは蚯、または蚓。酸素不足で水面でパクパクと口を開ける姿が酒壺に似てる、また、口を開けた時に[酋(chiu)]と鳴く会意&形声文字。



 天武天皇の母の、35代皇極天皇(重祚で37代斉明天皇)はまさに神威を継いだ。
 皇極天皇から天武天皇の時代まで自然災害が多かった。とくに皇極天皇の時代は旱魃や長雨などの気象異常が多かった。天の災い。天の祟り。まさに天災。
 皇極天皇は天の祟りを鎮めた。旱魃に雨を降らせ、長雨に雨を止ませた。日神の随神、水神を自由に操った。祈止雨祈願。さらに征東も進め、鎮めた。
 とくに天武天皇の時代は噴火や地震が多かった。地の災い。地の祟り。だけど天武天皇は地の祟りを鎮められなかった。神威を継げなかった。残念。ギター侍。ゆえにだれよりも、なによりも自然災害におびえた。675年から686年まで、西国(西日本)の南海トラフの地震が続いた。天の祟りを鎮め、征東を進めた皇極天皇。だけど天武天皇は地の祟りを鎮められなかった。征東を進めたけれど地の祟りに、富士山に塞がれた。
 675年、天武天皇は古代中国の道教、佛教、そして神道が合わさった陰陽道を考えた。陰陽寮を設けた。
 だけど。南海トラフの地震が続くなか、684年に伊豆大島の噴火と、統治下の畿内の白鳳地震。科野国(信濃国)に遷都を考えた、685年に浅間山の噴火。

 686年、天武天皇はショックで倒れる。
 宮中に祀った神剣の祟りとなり、改めて熱田神宮で祀りあげる。熱田神宮と土佐神社の関係はわからない。流れてきた神剣の献上かもしれない。天武天皇が盗まさせた神剣の返上かもしれない。土佐神社に奉じる一族の長の佩剣の献上かもしれない。
 なんで天武天皇が神剣を欲したのか。
 空間だけでなく時間までも治める超越な、隠然な存在の威力。人の力が及ぼない絶対な存在の威力。人が畏まる大いなる存在の威力。神威の力。
 祟る山神を、祟る地の神様を、祟る古の神様を鎮めるための威力。権威の力。

 686年。最初の京、力の象徴の新益京(藤原京)ができるまえ、神剣は熱田神宮に奉じられた。だけど神威の力は強すぎた。大きすぎた。天武天皇は悩みまくり、心労死。



 天武天皇と、嗣ぐ天武系皇統の時代は自然災害が多く、偶然に富士山が関わる。
 オオヤマツミを祀る神社が西国に多いのは、南海トラフに関わる。伊豆半島、富士火山帯以西で地震が起きる。南海トラフの東限は伊豆国一宮の三島神社(三嶋大社)、そして富士山。富士山は大陸プレートの北米プレートとユーラシアプレート、海洋プレートのフィリピン海プレートの境目に聳える。マグマが集まり、地震が起きるプレートの境目に聳える。日本平(有度山)はプレートが動き、盛り上がってできる。
 権威の力で鎮められなかった祟る山神、祟る地の神様、祟る古の神様。
 だから神話で富士山は書かれない。倭建命は富士山を見ない。
 竹取物語で、帝は富士山の山頂で不死の薬を焼き捨てる。富士山は不死の山となる。帝は死ぬけれど、富士山は死なない。かぐや姫を諄く男は壬申の乱の功臣がモデルという。天武天皇は死ぬけれど、富士山は死なない。
 空間だけでなく時間までも治める超越な、隠然な存在の威力。人の力が及ぼない絶対な存在の威力。人が畏まる大いなる存在の威力。神威の力を見せつける。



 時代は変わる。高天原の日神の神威の力も衰える。新たな八幡神の神威の力に変わる。
 天智系皇統は自然災害よりも人の恨み、妬み、嫉みにおびえる。鬼の穢れとなり、禍い(災い)となる。自然災害となる。八幡神の神託は謀叛や叛乱を起こす前に誅して(殺して)おきなさい。あとは放生会を行えばいい。佛様に縋ればいい。
 陰陽道も天台宗により占術から咒術へと変わる。宇迦之御魂神も、八幡神も天台宗により変わる。
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