79 マゼラン祭りの三島鴨神社・前篇

文字数 1,615文字



 瀬戸内海の大三島にオオヤマツミを祀る伊予国一宮の大山祇神社がある。伊豆国一宮の三島神社(三嶋大社)を東限に、オオヤマツミを祀る神社は西国(西日本)に多い。三島神社の以東でオオヤマツミを祀る神社は三島神社の分祀、または近代創建の神社。三島系という。だけど東国(東日本)でオオヤマツミを祀る神社、大山祇神社がある。大山祇神社の分祀で山祇系という。東国で続く噴火や地震を鎮めるため。山の祟りを、地の祟りを鎮めるため。
 三島神社の祭神は、大三島の山神オオヤマツミの説と、御島(大島などの伊豆諸島の火山島)の山神の説がある。さらにコトシロヌシさんの説もある。じつは3説も正しい。

 一説に伊豆(イヅ)は湯出(ユヅ)、伊予(イヨ)は出湯(イユ)。湧水(温泉)に関わる地名という。紀伊国(和歌山県)や出雲国(島根県)の熊野(ユヤ/イヤ)も湧水が関わる。湧水信仰の中心に神社が建つ。湧水は火山の神様の恵み。火山性温泉。火山のない地の湧水は地の神様の恵み。非火山性温泉。かつて火山があったり、断層(プレートの境目)があったり。古の神様は祟り(噴火や地震)とともに恵み(湧水)を齎す。
 ついで。人名や地名に多い[伊]の語源は、この、かの。語調を整えるときに使われる好字。木の国(キクニ)は紀伊国、簸の川(ヒカワ)は斐伊川。字源はにんべんに尹。尹はただす、おさめる。手に杖を持つ象形文字。にんべんで、正す人。治める人。神職者、聖職者。

 狩猟や漁撈の時代、人はどこに住んでたのか。幸を恵む山や海の近くの、水を恵む地。滝や川の近く。池沼や湖の近く。地名は、まずは水を恵む地につけられる。つぎは幸を恵む山や海。みんなの住む地。遠く見える、みんなが気になった山。山神や海神の祟りのあった地に、住む地につけられる。
 同じ土地に住めば地勢(地質・地形)や気候に対する感情は似る。そんな感情の共有が、記憶や記録の共有、意識や知識の共有となり、共有の神様を創る。地主神。
 神様は、だれのために、なにのために創られるのか。神様は、自然のなかで人が生き続けるために創られる。



 読者が遠のく、ややこしい長い話を始める。解説役の私も遠のきたい。

 神武征東神話で、贄を献じた贄持之子。紀伊国のアタのウガイ族は後裔一族。鵜飼。
 贄は神様へ献じる海の幸、山の幸。または農作物。のちに天皇へ献じ、幸の領有を献じる。天皇は、神様とともに幸=饌(ソナエモノ/供物)=贄を食べて命を長らえる。つまり神様の土地、アタのウガイ族の領地を献じる。天皇へ帰順儀礼。土地は神様のものから人(天皇)のものへとなる。
 ついで。調神社の調は織物。幸に恵まれない地や、農耕に向かない地は糸を紡ぎ、布を織る。
 イソ族は全国各地の魚貝を献じる海人族。海人族は、ほかに海運を生業とするアマ族があり、玄海(のちに瀬戸内海)のアヅミ族の、北海(日本海)のミナカタヌシさんの一族、南海(南太平洋)のヲハリ族などがある。色々なイソ族やアマ族が全国各地の海域で鬩ぎ合う。のちに外宮に奉じる一族がアマ族、イソ族をまとめる。

 カモ族は全国各地の贄を献じる一族。租庸調の租は作物。庸は労役。
 調は調物(織物)と、のちに贄が含まれる。贄は産物。つまり海の幸や山の幸。魚貝、鳥獣、果実など。畿内五国のカモ族は、じつはオウ族の後裔のオウのカモ族と、ホヒのカモ族がある。すでにややこしい。
 オウのカモ族の本拠地は高鴨神社。分祀に葛木御歳神社、鴨都波神社。祭神はコトシロヌシさん。オオモノヌシ(トミビコさん)と関わる。壬申の乱で武功が認められた賀茂蝦夷、役小角(賀茂役君)、陰陽師の賀茂忠行が有名。
 ホヒのカモ族の本拠地は賀茂別雷神社、賀茂御祖神社。江戸時代までの平安京の北方を護る神社で有名。祭神はカラス衆の頭のヤタノカラスと孫。神武征東の神話、熊野三山の神札、JFAのシンボルで有名。だけど祀るヤタノカラスの出自はあまりわからない。
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