92 せつなそうな熱田神宮

文字数 1,235文字



 夜に口笛を吹くと蛇が出る。つまり口笛は闇夜に棲む悪い精霊(モノノ怪)を誘う。一説に口笛は人さらいが獲物を見つけた時の合図という。蛇に、悪い精霊に攫われる。
 本来は、口笛は良い精霊も、悪い精霊も誘う。操る。口を窄めて息を吐く、唸るように声を出す。安倍晴明は口笛で式神を操る。



 初代神武天皇と10代崇神天皇は同一で、2代綏靖天皇から9代開化天皇までは非実在説と、実在説がある。欠史八代は葛城国を治め、崇神天皇に順(マツラ)わなかったため滅ぼされたという。毛野国、熊曾国と同じく、史話で葛城国という国名はなく地名。葛を編んだ網で討った土隠(土雲/土蜘蛛)の城。毛野国、熊曾国と同じく、憚れ、隠され、いつのまにか忘れられた国。葛城山の別名はカモ山。オウ族、オウのカモ族と、アヤ族、ヤマトのアヤ族が治めた国。
 カモ族の本拠地の高鴨神社(高鴨阿治須岐託彦根命神社)が建つ。ホヒのカモ族の賀茂別雷神社と賀茂御祖神社の賀茂二社の元社。オウのカモ族の葛木御歳神社、鴨都波神社(鴨都波八重事代主命神社)、葛城一言主神社(葛木坐一言主神社)などの元社。

 460年、オウのカモ族の長(ヒトコトヌシ)は21代雄略天皇と葛城山で遇い、頭を下げず、土佐国に流される。675年、天武天皇に佩剣を献じる。764年、ホヒのカモ族の配慮で配流は免じられ、葛城一言主神社に祀られる。



 檜隈の姫の死後、ヤマトのアヤ族の後裔一族は尾張国に移ったヲハリ族と、葛城国に移ったフエフキ族。宮中祭祀を行うため、フエフキ族。祟り神を操るため、鎮めるため、笛を吹く。唸るように口を窄めて息を吐く。咒言を誦える。

 葛城国は大和国葛上郡、忍海郡、葛下郡、高市郡に別けられる。高市郡飛鳥村。
 ヤマトのアヤ族の本貫地だった。天武天皇の子の高市皇子が育った。宮所(岡本宮/板蓋宮/浄御原宮)があった。
「フ、フエフキも、ウソブキだ。フエフキ族も、蛇を操る。巫は蛇神を操り、蛇神は巫に憑き、ま、祭(マツリ)を動かす。巫が政(マツリゴト)を動かす」

『祭を司る巫が族長となり、母系血統の女が長を、信仰を継いだ。天ツ神は、順(マツラ)わぬ巫がジャマとなる』

「檜隈の姫も、たしか巫。フエフキ族も、ヲハリ族も巫術を使う」
 昔は口笛で山神を寝床に誘い、子を宿す。半神半人が長となり、山神の土地を借りる。今は口笛で雷神を寝床に誘い、子を宿す。半神半人が長となり、蛇神の土地を譲られる。

 フエフキ族の奉じた笛吹神社は、近所の葛木坐火雷神社と合祀となる。
 笛吹神社の祭神はアマのカグヤマ(タカクラジさん)。葛木坐火雷神社の祭神は火雷大神。山城国の神話で、火雷大神(一説に乙訓坐火雷神社の祭神)がヤタノカラスの娘を娶り、賀茂別雷命が産まれたとある。
 火雷大神は雷神でなく、じつは噴火雷の神格化で火山の神様。イザナミさまの屍に生じた8柱の雷神。とてもややこしい話だから、いずれ。

 ついで。インドの蛇は笛の音でなく、笛の動き、叩かれた籠の動きで踊らされる。
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