52 私は夢で眠る・前篇

文字数 1,228文字



 長い夢のような1日が終わった。
 広縁のカーテンは閉めてない。障子を通した優しい月光のなかで私は眠る。体も、心も疲れたけれど、なぜか眠れない。目を閉じるけれど色々なシーンが見える。耳を塞ぐけれど色々なセリフが聞こえる。
「冴えまくり、だ」独り言ちる。枕元に置いたスマホを弄る。

 鬼は牛の角と虎皮の褌姿で、山奥や孤島に棲む。鬼は隻眼が多く、体を鍛える。鬼は人を誑かす。鬼は悪行で桃太郎に討たれる。
「虎柄のニッカボッカで、山奥に棲んでる。隻眼で、マッチョなM体質だ。私を誑かす。まさに鬼のイメージだ」私はなんとなく笑う。
 クエビコさんは静か。隣のへやも静か。神様は眠らないけれど、酔っぱらう。酔ったら眠くなるのかな。私に気をつかってるのかな。まあ、賑やかでも、静かでもいい。みんなと一緒にいられる。

 仰むけ、スマホを弄る。左腕のブレスレットがずれる。アパートにいるときは、キューピーちゃんにかけてたから、付けながら寝るのは久しぶり。
 翡翠の勾玉を見る。翡翠は不老不死、再生や甦生の象徴。
「そういえばブレスレットに戻した理由を訊かなかった」独り言ちる。

 翡翠は高志国の姫川(沼河)で採れた。
 神話で、オオクニヌシさんは沼河の姫と組み、出雲国が翡翠の勾玉を作り、外国に売り、国力を高めた。朝鮮半島で、姫川の翡翠の勾玉が大量に見つかった。

 高志国の神話で、ミナタカヌシさんは姫川を遡り、諏訪大社に鎮まったとある。
 じつは諏訪大社のほんとうの祭神はわからない。須波(諏訪)神は石神、蛇神、風神、諏訪湖の水神と神性も多様。



 姫川は糸魚川静岡構造線に沿って流れる。翡翠は造山活動、火山活動でできる。西日本と東日本の島が寄せられ、勢い、土砂が盛り上がり、約530万年前に日本列島となる。土砂とともに翡翠が地表に現れる。
 親不知子不知の崖から糸魚川静岡構造線を遡ると中央構造線にぶつかる。ぶつかった処に断層湖の諏訪湖がある。糸魚川静岡構造線も、諏訪湖までは地表で断層が見られる。
 西日本の石神(イシカミ)信仰と、東日本の石神(シャクジン)信仰を辿った処に諏訪国がある。諏訪大社がある。
 狩猟の縄文時代と農耕の弥生時代の境目に現れた神様。
 石神(イシカミ)は噴火や地震の、地の生気や生力を司る神様。農耕時代となり、石神(シャクジン)は地を鎮める神様となる。

 神話で、ミカヅチヲはミナカタヌシさんを隠ぬ(見えぬ)神様、鬼神として諏訪国に鎮める。石神(イシカミ)も、ミナカタヌシさんも諏訪湖に沈める。鎮める。鎮めた神様を塞ぐように、諏訪大社上社が建つ。石神(シャクジン)を祀る。

『へ、蛇神は、いなくなる。いつのまにか古代中国の神獣の、龍神に変わる。蛇神(幼体)は龍神(成体)となり、天へ昇り、雨を司る神となる。日神の、ミ、ミサキ神だ。龍神になれなかった、お、堕ちこぼれ蛇神は田に立たされる。タダのカカシとなる』

 農耕時代が始まる。諏訪大社下社が建ち、田畑の神、龍神(水神)を祀る。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み