84 ハッピーなカラス・後篇

文字数 2,451文字



 ヤタノカラスに随わなかったカモ族。遂われたオウのカモ族。
 三島鴨神社の社伝で、オオヤマツミは大三島の大山祇神社へ遷ったと伝える。瀬戸内海の海岸に多いヒルコ系エビスを祀る神社。西宮神社、和田神社、石津太神社。やっぱコトシロヌシ系エビスが流され、ヒルコ系エビスになったかもしれない。
 神話で、天ツ神に随いながら、天ノ逆手を打って逝ったコトシロヌシさん、天ツ神の天意に随えず、流されたヒルコ。天ツ神に随わず、流されたエビス。遂われた人。
 かつて瀬戸内海の海岸づたいに、家族単位でエブネ(家船)に住む海の人。海とともに生き、群がらなかった人。権力者に、ボスザルに随わなかった人。ムラ社会を遂われた人。エブネの遺物遺跡はない。だけど瀬戸内海の海岸に神話という記録はある。
 エビスは、かつて海の彼方から訪れる稀れ神。寄り神。客神。
 エブネは、島神とともにエビスを崇めたかもしれない。エビスは海の幸の恵み神。海の祟り神でない。
 東の海の彼方から、ニライカナイから来た神様。とともに歌う、舞う。宴を行う。そして神様は海の幸を齎し、去る。
 西の海の彼方から、浄国から来た異装の神様。やっぱとともに歌う、舞う。宴を行う。異なる文化や新しい技術を齎したけれど、去らない。男を殺しまくり、女に帰順を求め、ずっといる。

 黒潮で南洋諸島(東南アジア)から南西諸島を経て流れついた九州南域、青潮(黒潮の分流の対馬海流)で南洋諸島から台湾島、五島列島を経て流れついた九州西域、朝鮮半島から対馬島、壱岐島を経て流れついた九州北域。九州がエビスの本貫地という。
 流れてきた海の方位で、神様の神性が、いや、性格が異なる。恵む神様もいれば祟る神様もいる。優しい神様もいれば厳しい神様もいる。友好を求める神様もいれば帰順を求める神様もいる。色々な神様が流れついたわけだ。



 かつて伊豆半島の先端の、伊豆国加茂郡白浜村に建ってた三島神社(三嶋大社)の社伝で、コトシロヌシさんは当社へ移ったと伝える。コトシロヌシさんを合わせ祀る。
 三島神社を東限に、オオヤマツミを祀る神社は西国(西日本)に多い。三島神社の以東でオオヤマツミを祀る神社は三島神社の分祀、または近代創建の神社。三島系という。だけど東国(東日本)でオオヤマツミを祀る神社、大山祇神社がある。大山祇神社の分祀で山祇系という。移ったオウのカモ族が奉じた神社。砂鉄の集積場。採鉄の集会場。

 隼人の崇めるオオヤマツミ。神話で、娘神のコノハナサクヒメに東国(東日本)の山々を譲った。譲った東国に建つ大山祇神社。コノハナサクヒメは山神の祟り(噴火)を鎮める水神。山神に仕える若き巫の神格化。
 火山と湧水は特別な関係。固体のマントルが水により、液体のマグマとなり、噴火。そして積もった火山石や火山灰は雨水を溜め、地下水、湧水となる。火山の神様と水神は特別な関係。水神は噴火で火山の神様となり、そして噴火の神様を鎮める水神となる。また、地下水を含んだ地層はずれ、断層運動となり、地震を起こす。
 鎮められたあと、噴火がおさまったあと、地下水により花崗岩ができる。磁鉄鉱石を含む火成岩の一種。脆く、地上に現れた花崗岩は奇岩を模る。
 花崗岩は、本来は固い。だけど温度差に弱く、脆くなる。地震や台風で顕れた花崗岩。日に照らされて崩れて奇岩となる。脆くなった花崗岩は雨で流され、川に流され、砂鉄が残る。洲処(スカ)ができる。

 紀伊半島も1400万年前の熊野カルデラの、たった1度の噴火でできた花崗岩で奇岩を模られ、冷えきらない花崗岩でいまだ温泉が湧く。活火山のない近江国も、伊予国の四国も、かつて鈴鹿山や石鎚山で火山活動があり、非火山性温泉が湧く。日本列島は、いつも造山活動、火山活動、断層運動が起きる。日本列島は、どこも砂鉄が採れ、温泉が湧く。
 伊豆半島は玄武岩が採れる。やっぱ磁鉄鉱石を含む火成岩の一種。マグマが急に冷えれば玄武岩、ゆっくりと冷えれば花崗岩。
 火成岩で成る山は鉄穴山。一説に神奈備山の語源。神様の隠れる山。神名火山。隠れる神様は鉄の神様。他人に穴を掘らせないため、鉄を採らせないため、禁足地となる。



 出雲国を離れたオウ族は全国各地に移り、カモ族と名のった。または全国各地の鍛冶族がカモ族と名のった。カモの地名がつけられ、カモ神社が建った。



 ヤタノカラスに随ったホヒのカモ族は、オウのカモ族を遂い、ただのカモ族と名のり、全国各地のカモ族をまとめる。

 やがて。
 カモ族も、近江国の鍛冶族も、さらに高度な製鉄技術、鍛冶技術に遂われる。
 鉄を採れず、鴨を狩る。
 さらにただのカモ族はイソ族(磯部)や鳥取部などをまとめ、全国各地の贄(産物)を献じる一族となる。太政官内蔵寮の頭、申食国政大夫となる。贄殿は宮所(宮殿)に設けられ、管理を任される。帰順儀礼は、まずはただのカモ族の長に頭を下げる。

 遂われたオウのカモ族は、咒術師(役小角/賀茂役君)、陰陽師(賀茂忠行)となる。太政官陰陽寮、斎宮寮の頭となる。鉄を採らず、暦を観る。
 さらにウラ族(卜部)をまとめる。亀甲を焼き、亀裂の形で吉凶を占う。[卜]は亀裂の形。吉凶を口で伝えるで会意文字の[占]。介意壱岐国と対馬国、そして伊豆国の三島神社に卜部が設けられる。神祇官の次官は伊豆卜部氏という。
 オウのカモ族は祭(マツリゴト)と関わる。コトシロヌシさんは宮中八神となる。

 そして。
 政(マツリゴト)を司る太政官と、祭を司る神祇官。ただのカモ族は政だけでなく、祭と関わるため、謀(ハカリゴト)。葵祭。ラッキーマンはハッピーとなるか。ただのパリピーとなるか。プラチナエンド、いや、ハッピーエンドとなるか。
 私の恋バナはハッピーエンドとなるか。私はただの解説役か。だいたい、[武神彼氏]は恋バナでないか。

 ニウヒメさんは丹を採れず、雨を祈る。かわいそう。ニギハヤヒに惚れる。とてもかわいそう。アンラッキーなニウヒメさんの恋バナもハッピーエンドとなるか。
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