34、四体液説(7)
文字数 1,335文字
黄胆汁質は荒々しい性格で熱血漢、短気で行動的、野心も強い。気前がいいが傲慢で、意地悪で気難しい面もある。消化力が高く大食だが、やつれて見える。脈が速く心臓に負担がかかる気質で、また張り切り過ぎて肝臓や腎疾患に陥りやすい。黄色味がかった熱く乾燥した肌をしており、硬くて水気に乏しい筋肉をしている。
黒胆汁質は寡黙で頑固、孤独癖があり、運動も休養も社交も好まない。強欲で倹約家、利己的で根に持つタイプ。神経質で自殺傾向がある。注意深く明敏、勤勉で、一人で思索に耽ってばかりいる。黒胆汁は主に悪いイメージを持たれ、狂気・精神錯乱と関連する体液といわれたが、天才を生み出す体液だとも考えられた。土気色で乾燥した冷たい皮膚をしていて、たいてい痩せている。脈は遅く耳は遠い。血尿症で、食欲はあったりなかったりである。
ラミロ2世も言っているが、気質や体質は持って生まれたものだけでなく環境によるところも大きい。黄胆汁質の性格の者も、修道院に暮らしていれば黒胆汁気質になってきて1人で思索に耽るようになるだろう。それに私はかなり長生きした。年を取れば脈が遅く耳が遠くなるのも当たり前だ。
人の心の声ならば余も毎日のように聞いた。退位して修道院で暮らすようになってからは、余は忌み嫌われ怖れられていた。それでも余は生き続けた。娘に子が生まれ、アラゴン王位が継承されるのを見届けるまでは死ねなかった。