64、キンディー(1)
文字数 928文字
アブー・ユースフ・ヤアクーブ・イブン・イスハーク・アル=キンディー(801年ー873年?)は中世イスラームの哲学者、科学者、数学者、音楽家。広範な分野の著作のアラビア語訳を行い、諸分野、特にイスラーム哲学の基礎を作った人物である。
ヨーロッパ語圏では、ラテン語化されたアルキンドゥスの名でも知られている。また、ペルシア人やユダヤ人の学者が多い中で、数少ないアラブ系の部族にルーツを持つ偉大な哲学者の1人でもあったので、「アラブの哲学者」という敬称を持つ。
キンディーは、クーファの他、バスラやバグダードで学んだ。彼の知識は抜群であり、アッバース朝の時のカリフ、マアムーンの目に止まり、キンディーはバクダードの知恵の館に呼ばれた。知恵の館は、ギリシャ哲学やギリシャ科学の著作をアラビア語に翻訳する中心的な施設でキンディーは当地でアリストテレスの哲学書やプトレマイオスの『地理学』などを翻訳した。
彼自身はギリシア語を解さなかったようだが、ギリシア語文献からの翻訳の依頼や、生粋のアラブの名族のひとりとして豊富なアラビア語の知識を生かし、それらの翻訳指導にあたっていた。特にアラビア語による哲学語彙の確立に多大な貢献をしている。翻訳した範囲も哲学・地理学・論理学・医学・物理学・数学・天文学にも及びその翻訳書数も260に及ぶという(しかし翻訳の大半は散逸してしまい、わずかに40程の作品が現存する)