第62話

文字数 753文字

 その時、医務室に鬼姫と高取と湯築が駆け込んできた。
「武様! 大丈夫ですか?! ひっ! 酷い怪我!」
 鬼姫は真っ青になり、すぐさま武に泣きながら抱きついたが、すぐさまハッとして武から離れた。その表情は何かに驚いた顔である。
「この人、武じゃない!」
 ベットで眠っている武を見ていた高取は不可思議なことを言う。
 高取はブルっと震え、武から距離をとり自然と身構えてしまった。
 何に震えたのだろうか? 
 何故、武に対して身構えてしまうのだろうか?
 おや、私も薄々わかってきた。鬼姫と湯築も何となくそんな気がしたのだろう。すなわち、今ベットで寝ている武は武であって武ではないのだろう。
 皆、光姫を除いて武から少し距離をとっていた。


 光姫の心情をさっせられずにいたが、武の目が開いていた。武の失った片腕は薬湯の染み込んだ包帯で巻かれてある。
 大きく裂けた胸から腹も、針と糸によって傷が縫合されていた。
「はじめまして、タケル様。私の名は光姫と申します。今は安静にしていてくださいね。今はしばしお休みくださいませ」
 鬼姫たちは何かに警戒しているかのようである。
 その時、廊下から蓮姫と三人組も医務室へと駆けこんだ。
「怪我は大丈夫?! って? え? 誰? この人?」
 蓮姫も驚きの声を上げた。
「あれ? 武様? 雰囲気が全然違う」
「武様?」
「なんだか雰囲気だけで肌がピリピリとします」
 三人組は口ぐちに言っていたが、確かにここから見ても武は普通ではない。かなり強い気を放っていた。
 光姫はコックリと頷き皆に説明した。
 照明に写った光姫の顔は、この上なく喜びに満ちていた。
「この方はヤマトタケルです。ですが、山門 武でもあります」
 皆の表情は驚きと不安とで複雑であった。
 
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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