第53話

文字数 793文字

「龍の大きさにもよりますが、まず地姫さんの雷で渦潮が出現したと同時に渦潮の形を崩します。それから、形が崩せなかった渦潮には、自衛隊や武士さんたちが牽制をします。つまり、巨大な龍が来たとしても渦潮からださないのです。最後には倒すのではなくて、根気で追い返してしまいましょう。幾度も幾度もと渦潮を崩して諦めさせる。それが私の考えた作戦です」
 麻生の静かな声の作戦に、宮本博士と地姫と田嶋はしっかりと頷いた。

 ここは鳳翼学園から南へ約60キロの地点の海域。

 雨の降りしきる暗き海に巨大な渦潮から黒い物体が現れた。いや、昇った。その巨体は体長120メートルに至る。まるで山のようである。
 無数の渦潮がその黒き物体の近くに突如現れた。けれども、幾度もの轟雷によって、それぞれの渦潮が崩れ始めた。
 黒き物体は憂いの表情をしながら、鳳翼学園の方向へと向かう。その巨体の周囲には数多の龍が昇り始めていた。

ここは鳳翼学園の2年B組。

「早速、来ましたね! とてつもなく巨大な龍が来ます! 四海竜王の一人。南龍です! もうすでに渦潮から昇っています!」
 地姫の発した声に2年B組は、皆ざわめき出した。教室全体にとてつもない不安が広がったようだ。皆、食事中であった。レパートリーの少ない缶詰と飲料水での食事で、地姫たちは文句一つもいわない。さすがであるが、今はそれどころではない。 
「みんな落ち着いて! 卓登! 宮本博士のところへ行くわよ!」
 麻生は卓登を連れ、宮本博士のいる2年A組へと向かった。
 
 2年A組まで走る麻生の後ろの卓登は、この学園からも見える南龍の巨大さに震え上がった。
「あんなのどうするんだ!」
 叫びながら麻生に着いていく。
「今、田嶋さんも2年A組にいるから聞いてみましょう! もう渦潮から出てるけど。でも、なんとか追い返せれば、それでいいの!」
 2年A組では宮本博士が頭を抱えていた。
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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