第10話
文字数 1,134文字
「武様。それも大丈夫です。卓登様と一緒に学園内を捜索中です。もうすぐ救援物資が来るって先生たちが言ってましたので」
「ほっ、ずいぶん準備が良いんだな」
武は感心すると、高取の顔を思い出した。
こんな時こそではあるのだが、肝心の高取も学園内を何やら探していた。
それは……後にわかるであろう。
学級委員でもある武の役目は、最初から決まっていた。そう、みんなの無事と人数の確認である。
当然、麻生も口には出さないがもともと周知のことであったようだ。
「さあて、確認。確認っと」
僅か数分で武は体育館にいる全生徒数とその家族の数。怪我などのあるかないかまでを調べ上げていた。
途中、湯築が武に、「これから、どうなるの?」と不安げな顔で聞いてきたが、武は今は自分の役目のことしか考えていなかった。
「今じゃ世界中で安全な場所なんてないからな。仕方ないから高取に聞いてみよう」
としか言わない。少々真面目過ぎで、やはり少しだけ抜けているのだろう。
こんな時でもどこか微笑ましかった。
ぽたぽたと降る雨の中で、ずぶ濡れになった高取は旧校舎の入り口にいた。世界中の雨を気にしないものが、そこにあるかのようだ。
高取はボロボロの旧校舎へと入っていった。
そう。この旧校舎には、幾つもの救命具があるのだ。
高取はそれを数個持ち出した。
一方。
麻生と河田は卓登と美鈴と合流して、まだ人がいないかと学園内をくまなく探していた。
もうすぐ救援物資や自衛隊がくるのだが、念のためである。
麻生は何気なく。薄暗い廊下から窓の外を見た。
水かさがみるみるうちに膨れ上がっていた。
ここは高い丘の上にあるが、もうすでにグラウンドまでが沈みだしていたのだ。
体育館では、武と湯築が皆を学園の屋上へと誘導しようとしていた。
「走れない人は、奥に待機! すぐにおれが連れて行くから!」
武は体育館の入り口付近で、人々を避難しながら素早く人数を数えていた。
「慌てないで! 学園の屋上からならヘリコプターの離着陸ができるわ!」
湯築は負けじと率先して誘導していた。
救援物資が着くころには、体育館も水没してしまうくらいの水かさが膨れ上がっていた。
四方から渦潮が、ここ鳳翼学園目掛けて近づいてきた。
まるで、意志があるかのように……。
ところで、この学園には生徒会長の吹雪 勇がいるのだが、すでに一人だけで屋上に向かって走っていた。
薄情のように思えるだろうが、本当は……やはり薄情なのである。
吹雪は屋上に辿り着いた。
応援のヘリなど自衛隊たちが何か巨大なものと戦っているのを目の当たりにして、震え上がった。
龍である。
「ほっ、ずいぶん準備が良いんだな」
武は感心すると、高取の顔を思い出した。
こんな時こそではあるのだが、肝心の高取も学園内を何やら探していた。
それは……後にわかるであろう。
学級委員でもある武の役目は、最初から決まっていた。そう、みんなの無事と人数の確認である。
当然、麻生も口には出さないがもともと周知のことであったようだ。
「さあて、確認。確認っと」
僅か数分で武は体育館にいる全生徒数とその家族の数。怪我などのあるかないかまでを調べ上げていた。
途中、湯築が武に、「これから、どうなるの?」と不安げな顔で聞いてきたが、武は今は自分の役目のことしか考えていなかった。
「今じゃ世界中で安全な場所なんてないからな。仕方ないから高取に聞いてみよう」
としか言わない。少々真面目過ぎで、やはり少しだけ抜けているのだろう。
こんな時でもどこか微笑ましかった。
ぽたぽたと降る雨の中で、ずぶ濡れになった高取は旧校舎の入り口にいた。世界中の雨を気にしないものが、そこにあるかのようだ。
高取はボロボロの旧校舎へと入っていった。
そう。この旧校舎には、幾つもの救命具があるのだ。
高取はそれを数個持ち出した。
一方。
麻生と河田は卓登と美鈴と合流して、まだ人がいないかと学園内をくまなく探していた。
もうすぐ救援物資や自衛隊がくるのだが、念のためである。
麻生は何気なく。薄暗い廊下から窓の外を見た。
水かさがみるみるうちに膨れ上がっていた。
ここは高い丘の上にあるが、もうすでにグラウンドまでが沈みだしていたのだ。
体育館では、武と湯築が皆を学園の屋上へと誘導しようとしていた。
「走れない人は、奥に待機! すぐにおれが連れて行くから!」
武は体育館の入り口付近で、人々を避難しながら素早く人数を数えていた。
「慌てないで! 学園の屋上からならヘリコプターの離着陸ができるわ!」
湯築は負けじと率先して誘導していた。
救援物資が着くころには、体育館も水没してしまうくらいの水かさが膨れ上がっていた。
四方から渦潮が、ここ鳳翼学園目掛けて近づいてきた。
まるで、意志があるかのように……。
ところで、この学園には生徒会長の吹雪 勇がいるのだが、すでに一人だけで屋上に向かって走っていた。
薄情のように思えるだろうが、本当は……やはり薄情なのである。
吹雪は屋上に辿り着いた。
応援のヘリなど自衛隊たちが何か巨大なものと戦っているのを目の当たりにして、震え上がった。
龍である。