第37話

文字数 680文字

 それを見ていた卓登は歯ぎしりのし過ぎで真っ青な顔になった。当然、道という字が好きな卓登には羨ましいのであろう。
 学園内の宮本博士や自衛隊は、信じられないものを見たかのような驚きの眼差しをしながら、声援を送っていた。

 武が1000歳以上の龍を一刀両断にしていた。
 鬼姫は神鉄の刀で大津波がでるほどの横薙ぎをし、龍を数体始末した。海上を歩き。時には飛翔する武たちを目の当たりにして、鳳翼学園の生徒や生徒の父母たちの中には、夢を見ているのだろうかと目を擦るものもいた。
 虚船丸からも海上を歩ける巫女や大人たちが刀を振るう。
 まるで、戦であった。
 波を飛び越え、海面を走り、龍をはふるのである。
 湯築も一際長い槍で龍の心臓を穿ち、高取の落雷も龍を灰塵と化す。

 激戦の最中。
 武が麻生を探していた。
 その時、学園の二階の麻生と武は目が合った。

 二人はしばらくじっと見つめ合っていた。
 麻生がこくりと頷いた……。



 あの戦いの後、地姫の提案で、虚船丸を幾つか鳳翼学園へ残すことにし、武たちは再び旅立った。
 鳳翼学園では大歓声の中。廊下の窓際で麻生と卓登が空を見上げていた。
 かれこれ武たちの戦いは一時間もの激戦であった。
 空は晴れ渡り、健やかな風の海には、龍の脅威も綺麗に退けられている。
「また、旅に出るって……」
「え? いつの間に話したんだ?」
 卓登はしきりに首を傾げている。
「なんとなくよ。さあ、2年A組へ行きましょ。空飛ぶ船から色んな人が来ている」
 麻生は再び、空を見上げてから2年A組の教室へと歩いて行った。
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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