第88話

文字数 659文字

 暗雲が綺麗に消え去り、天鳥船丸の進路が晴れ渡った。
 変わりに身の毛のよだつ咆哮がこだまする大海原に、四海竜王のそれぞれの巨体が見えてくる。

 東西南北と四海竜王がそれぞれ陣取り。優に五千歳を超えた龍が居並んでいた。魚人たちの一万の大軍も海上にモリを構え陣形を敷いていた。
 タケルが甲板の先頭の光姫に聞いた。

「こちらの戦力は?」
「巫女と武士が約千人。それと私たちです」
「それならば、こちらの勝ちだ。俺一人で十分だ」

 光姫の言葉に、タケルはしっかりと頷いた。
 タケルはまず気を開放した。

 優しい風が大海原全てを包みこむかのようだった。荒波が静まり返った。白き雲が途端に散り散りとなった。数多の龍や魚人まで、そして四海竜王も途端に一時だけ静かになった。
 この海の上で、四海竜王の東龍は更に面白がったようである。犬のように尾を海中で大きく左右に振り、嬉々とした咆哮を上げた。

 天鳥船丸の甲板の中央には、虚船丸の代表の巫女と武士が十人と来ていた。鬼姫と蓮姫、湯築に、タケルが集まった。
 光姫と高取で、皆に作戦を伝えた。
「虚船丸の方々は主に魚人との戦いに徹してください。龍は、蓮姫さんと鬼姫さん。高取さん。湯築さん。四海竜王はタケル様です。ですが、皆々様の命が一番大事です。それぞれ加勢に加勢。援護に援護を重ねて下さい。お願い申し上げます」
 光姫は頭を皆に深々と下げた。

 高取は、タロットカードを地面に広げていた。
 一枚取り出すと、それは塔のカードだった。
 続いて、もう一枚引いた。
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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