第89話

文字数 715文字

 高取はそのカードをじっと見つめてから、こう言った。
「武。これから、あなたはこれ以上ない危機に瀕するの。でも、意外なところから物凄い助けがくるわ。でも、その助けは戦況を変える程の強力な何かなの。絶対、細かいことにも注意していてね。それに、その助けが受けられないと、この戦い私たちの負けよ」

「わかった」
 タケルは、高取の手を掴んだ。
 優しい気が高取の体内を充満した。
「ありがと。私、あなたが好きよ。きっと、いつまでも。迷惑かも知れないけど、こんな女がいてくれるんだな。って、いつか必ず思えるはずよ。私の想いをいつまでも大切に覚えていてね」
 やはり高取も武を好いていたのだろう。
 高取の最後に引いたカードは後々、話そう。
 これが、正真正銘の最後の戦である。
 だが、よほどのことがない限り勝ち戦であろう。
 轟々とこの海域を巨大な気が充満した。
 皆の気である。

「さあ、行って」
「武。頑張ってね。この戦が終わったら麻生さんのところへみんなで戻りましょう」
 高取と湯築がタケルに新しい二本の神鉄の刀を渡した。万が一の刀が折れたためである。そのため、タケルは刀を二本腰に差した。
 タケルはコックリと頷くと、四海竜王のところまで、走った。
 タケルはすぐさま敵陣のど真ん中に辿り着き刀を構えた。
 全ての魚人がタケルの足の速さに仰天し、震え上がった。怯んでいる隙を見逃さず虚船丸から鬨の声が上がり、千の武士が怒涛のごとく魚人の大軍へと雪崩れ込んだ。

 龍と巫女が海で舞う。
 高取と光姫の轟雷と竜巻の間で。

「さあ、鬼姫。私たちも負けてられないね」
 蓮姫たちも敵陣の中で美しく次々と血潮を巻き上げる。
 
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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