第42話

文字数 786文字

「知っていると思うけど、この方は日本の将来の吉凶を占う一族なんだよ。つまり、凄い方なんで仲良くやってね。これから竜宮城に行くんでしょ。自衛隊の活動は避難民の救助にライフラインの維持。放送局などの通信機器の復興など、龍の迎撃と鎮圧など、色々あって忙しいったらありゃしないから……。一緒に行ってね」
 海南首相は気さくな方だった。
 けれども、政を為すは人にありとも言う通りに、その柔和な性格のまま温厚な政策を実施してきたようである。
「鬼姫さん。この人って?」
 武が何かに感づいたようである。
「ええ、剣術ではないです」
 鬼姫は光姫に対しキッと目を細めたようだ。
「あら、お仲間?」
「そうかも蓮姫さん……あ、何かしら? 槍でもなさそうな感じ……」
 蓮姫と湯築も興味を抱いているようだ。
「弓です。弓と長刀を少々。皆さん、よろしくお願いしますね」
 光姫はニッコリと微笑んだ。
 この世のものとは思えないほどの美しい光姫は、キリッと整った顔にとても長い黒髪だった。黒髪の右側をおさげにしていて、おさげには幾つもの白いリボンが可愛らしく結ってある。年は地姫と同じか、それよりも少しだけ上のように思う。
 高取と似ているのは、目元くらいか。
 二人とも不思議な感じがする女である。
「あー。もう、仲良くなったようだね。良かった。私はこれからすぐに会議があるんだ。何かと忙しい身でね。それじゃあ、君たちの無事を祈ってるよ。日本の未来を半分預けたよ。またね」
 海南首相は手を振って、重鎮5人とエレベーターへと向かった。
 きっと、かなり忙しい身なのだろう。
 昔から為政者はなにかと忙しい身であったような。
 残った6人の重鎮も帰りの支度をしている。
 恐らく、忙しい最中に一目見たかっただけであろうか。
 皆、不安を抱えているのだろう。

 だから、私は武の方を見る。

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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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