第80話

文字数 780文字

 地姫と麻生、卓登が教室へ着くと、宮本博士たちは皆珍しくぐっすりと寝ていたようだ。研究施設と変わりない教室内で、寝袋で雑魚寝である。
「皆さま。起きて下さい!」
 地姫が叫ぶと同時に、すぐさまガシャンと窓が複数割れる音がした。

 その音がしたのは、ここ鳳翼学園の階下であろう。
 
 その直後に、ガラスを踏み鳴らす音が立て続けに聞こえてきた。
 なんとも不気味な夜である。
 気になった私は階下へと向かう途中、学園の西階段の方から。ぞろぞろと現れた武装した魚人たちに遭遇した。魚の顔をした魚人たちは皆、布でできた羽織だけを着た恰好だが、体を全て覆う薄い鱗に手には鋭利なモリを持っていた。
 
 当然だが、私の存在は乙姫しか知らないのだ。
 魚人たちの目的は何も知らないが、もはや何かの良からぬ策であろうということはわかった。

 恐らくは策を練ったのは北龍であろう。

 昔から何事も合理的であったような。
 おお、そうか。
 狙いは麻生か地姫であろう。

 学園の二階からすぐさま銃撃戦の発砲音が連続して響いてきた。

 田嶋がいち早く異変に気付いて、今は自衛隊が応戦しているのだろう。魚人は無数にいるようだ。それもそのはず渦潮から無尽蔵に何千と昇ってきているのであろう。

 耳を澄ますと、雷の音も轟き。

 学園は陰謀の闇に包まれようとしていた。
「はっ!」
 2年D組には教室全体が発光したかのような光が襲った。
 落雷が教室の窓から魚人目掛けて斜めに落ちた。
 地姫が降らしたのだ。

 教室のドアや壁を壊して何十人もの魚人たちが地姫と麻生たちを襲いだしている。
 北龍の狙いは間違いなく。
 この二人であろう。

 地姫が珍しく焦り出していた。
 それもそのはずである。
 地姫の落雷や轟雷は空のある開けた場所でなければ本領を発揮できないのだ。
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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