第94話
文字数 1,102文字
そういえば、武たちはもう竜宮城内部に入城しているはずである。
サラサラとした白き月の夜に、二人と私はどこからかくる不穏な空気に呑み込まれていった。
今はこの学園には自衛隊もいない。
確かに静かすぎる夜であった。
何やら得体の知らない空気に呑みこまれ、私は再び竜宮城へと急いで戻った。
しばらくして、竜宮城はやはり開城してあった。
上空の天鳥船丸やその数が減った虚船丸からは、無数の梯子が地へと落ちている。黄金の砂粒の地面に武たちが着地すると、次から次へと鬼姫たちも降りきた。
「待って! なんだか不穏よ! この先には何かある! 武、四海竜王との戦いの時に引いたカードは二枚だったの。塔のカードと……それと運命の輪のカード……」
「運命の輪……?」
「そう、この場合。チャンス、あるいは情勢の急激な悪化のどちらかよ」
隣にいる緊迫した顔の高取の言葉に武は首をかしげている。
梯子を慎重に降りてきた光姫や地姫も不穏な空気を感づいているのだろうか。
私も何やら暗雲のような不穏な空気を胸一杯に吸っていた。
高取の言うには、竜宮城へと入城した後、そこには形勢逆転の不吉な何かが起ころうとしている。
これは危ぶんで、石橋を叩いて渡るかのような慎重さが必要であろうな。
光り輝く砂粒の地に足を着けた地姫と光姫も高取の占いの結果に、それぞれ素直に頷いている。武と湯築、そして、鬼姫に蓮姫もかなり引き締まった顔をした。
皆、それぞれ城の中へと足を踏み入れる。
私は気になって仕方がないので一足先に、乙姫のところへと向かった。
武たちのいる正門から、約一キロ半のところに龍王の間がある。温水と冷水の流れる色とりどりの珊瑚の壁面に、時々、真っ直ぐに歩く。人の形の四海竜王や魚人たちを見かけた。四海竜王はどうやら人間の姿では皆、無事のようである。しばらくすると、竜王の間の御前に私は辿り着いた。
満月のような巨大な大窓の中心に乙姫の玉座があり、そこに乙姫が鎮座している。広い空間だった。壁に埋め込まれた鏡には種々雑多な美しき魚が回遊し、天井からは綺麗な流水が真下へと落ちていた。何やら四海竜王の東龍が乙姫に具申したようで、地に描いてある大きな円の東側に立った。
憂いを含んだ顔の乙姫の後ろには、広大な窓からここ南極を掘削する数多の黄金の龍が咆哮を上げ舞っていた。
運命の輪のカードの暗示か……それは御前試合なのだろうか?
それも、この地球と本星を賭けた。
この試合は勝つか負けるかで、どちらかの生命の滅亡を賭けるのだろうな。
武たちが竜王の間へと辿り着いた。
サラサラとした白き月の夜に、二人と私はどこからかくる不穏な空気に呑み込まれていった。
今はこの学園には自衛隊もいない。
確かに静かすぎる夜であった。
何やら得体の知らない空気に呑みこまれ、私は再び竜宮城へと急いで戻った。
しばらくして、竜宮城はやはり開城してあった。
上空の天鳥船丸やその数が減った虚船丸からは、無数の梯子が地へと落ちている。黄金の砂粒の地面に武たちが着地すると、次から次へと鬼姫たちも降りきた。
「待って! なんだか不穏よ! この先には何かある! 武、四海竜王との戦いの時に引いたカードは二枚だったの。塔のカードと……それと運命の輪のカード……」
「運命の輪……?」
「そう、この場合。チャンス、あるいは情勢の急激な悪化のどちらかよ」
隣にいる緊迫した顔の高取の言葉に武は首をかしげている。
梯子を慎重に降りてきた光姫や地姫も不穏な空気を感づいているのだろうか。
私も何やら暗雲のような不穏な空気を胸一杯に吸っていた。
高取の言うには、竜宮城へと入城した後、そこには形勢逆転の不吉な何かが起ころうとしている。
これは危ぶんで、石橋を叩いて渡るかのような慎重さが必要であろうな。
光り輝く砂粒の地に足を着けた地姫と光姫も高取の占いの結果に、それぞれ素直に頷いている。武と湯築、そして、鬼姫に蓮姫もかなり引き締まった顔をした。
皆、それぞれ城の中へと足を踏み入れる。
私は気になって仕方がないので一足先に、乙姫のところへと向かった。
武たちのいる正門から、約一キロ半のところに龍王の間がある。温水と冷水の流れる色とりどりの珊瑚の壁面に、時々、真っ直ぐに歩く。人の形の四海竜王や魚人たちを見かけた。四海竜王はどうやら人間の姿では皆、無事のようである。しばらくすると、竜王の間の御前に私は辿り着いた。
満月のような巨大な大窓の中心に乙姫の玉座があり、そこに乙姫が鎮座している。広い空間だった。壁に埋め込まれた鏡には種々雑多な美しき魚が回遊し、天井からは綺麗な流水が真下へと落ちていた。何やら四海竜王の東龍が乙姫に具申したようで、地に描いてある大きな円の東側に立った。
憂いを含んだ顔の乙姫の後ろには、広大な窓からここ南極を掘削する数多の黄金の龍が咆哮を上げ舞っていた。
運命の輪のカードの暗示か……それは御前試合なのだろうか?
それも、この地球と本星を賭けた。
この試合は勝つか負けるかで、どちらかの生命の滅亡を賭けるのだろうな。
武たちが竜王の間へと辿り着いた。