第38話

文字数 614文字

 大波に揺れる虚船丸の近くに、2年A組の教室のベランダがあった。
 先ほど戦いの渦中にいた。一人の巫女と武士の恰好をした大人の男二人が大船からベランダへと梯子を降りて来た。
 空に浮かぶ虚船丸からには大勢の武士が鳳翼学園の2年D組へと貴重な素材である神鉄を降ろしている。
 宮本博士や研究員たち、自衛隊のための配慮だった。

「はじめまして、本堂と申します。先ほどは危ないところを助けて頂き本当にありがとうございました」
 本堂先生が巫女と二人の武士に深く頭を下げている。
「お気になさらないで下さいね。それよりも」
 巫女が微笑んで頭を下げてから、そっと人を探し始めた。
恐らくは、この三人は存在しないはずの神社の代表なのだろう。
 本堂先生やそれぞれのクラスの担任。自衛隊や宮本博士たちが集まった廊下であった。人々のひしめき合うその場所で、巫女は麻生を探していた。
 その巫女は地姫であった。

 天鳥船丸では、鬼姫が遥か下方の鳳翼学園の二階。そう、麻生の方をキッと唇を噛みしめ悔しそうに見ていた。きっと、やきもちを焼いているのだろう。
 鬼姫にとっては、最大のライバルである。

「武様。絶対、今日も一緒に寝ましょうね!」
 鬼姫はニッコリ微笑んで、武の腕に抱き着いた。
「はっくしょん! さあ、行こう!」
 武は照れ隠しにくしゃみをすると、すぐさま鬼姫を連れて操舵室へと向かったようだ。
 もうすぐ東京であった。

 
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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