第24話
文字数 1,111文字
おお、おおよそだがわかった。麻生は武があの日曜日に龍の顎に正拳をのめり込まして傷を負わせていたので、顎が弱点だと知ったのだろう。そして、恐らく雨が止んだのは、あの謎の巫女の力であろう。
「高取。今までどんな凄い修行をしていたんだ?」
あれほどの対抗意識を辺りにばらまいていた高取に対して、武はどうしても聞きたかったのだろう。
「え? ただ座っているだけだった」
あっけらかんと言う高取の言葉に、武は目を丸くした。
高取と武は稽古を終えたという感慨深い気持ちを持って話しているのだろう。
「後は、弓の修行だったわ」
ここは存在しないはずの神社の海に面した紅い橋の上である。湯築も修練の間で蓮姫を驚かせるほどの腕を見せて、皆無事に竜宮城を目指すことになった。
武たちの目の前の大海原には、山の方の空から大船が幾つもザブンザブンと着水してきた。
「どの船に私たちは乗るのかしら?」
武の隣の湯築は髪をかき上げながら誰にともなく聞いていた。
「ああ、あの船よ」
高取が素っ気なく不思議な力を使って、数多の中から一隻の船を指差した。
「高取さん。鬼姫さんたちも一緒の船に乗るのかしら?」
「ええ、そうよ。私たちの船だけ最強ね」
武と高取。そして、湯築はサンサンと降る日差しの中で、しばらくは見ることができない太陽を見つめていた。
そういえば、あの三人組はどの船に乗るのだろう?
タラップというのはない大船である。武たちはそれぞれ角材でできた梯子を登っていた。大勢の巫女たちは大船の許容量いっぱいまで食材や衣類などを運んでいる。
一番最初に大船に足をつけた武は空を見上げている。
ついにここまで来たとでも思っているのだろう。
だが、武は決して一人でここまで来たのではない。
それまで、大勢の人々の思慕の頂点に立った結果である。
大船の下から鬼姫や蓮姫も登って来るのを見ているうちに、気付くといつの間にか登って来たのであろう地姫が武と話していた。
なんでも、これから先は太陽のない。暗黒の海である。皆の思慕を大切にせよと言っている。
地姫は珍しく真剣な顔であった。
「あー……困るんだけどなあ。まあ、いつものことだし。くしゃみが多くなるだけだと思っておくよ。おれは変わらないって約束したんだ」
そんな武は終始はにかんでいた。当然、麻生がいるからだ。どこかの穴へ隠れたいほど照れくさいのだが、何かの必死さからか? あまり気を抜いていないのでは?
「その意気です。あなたがモテるのは持って生まれた性分なのですから。気にしない方が非常に得なのです」
地姫は武の武運に対し、特殊な祝詞を唱えた。
数多の大船は大空を舞って、遥か彼方の暗き海へと向かって行った。
「高取。今までどんな凄い修行をしていたんだ?」
あれほどの対抗意識を辺りにばらまいていた高取に対して、武はどうしても聞きたかったのだろう。
「え? ただ座っているだけだった」
あっけらかんと言う高取の言葉に、武は目を丸くした。
高取と武は稽古を終えたという感慨深い気持ちを持って話しているのだろう。
「後は、弓の修行だったわ」
ここは存在しないはずの神社の海に面した紅い橋の上である。湯築も修練の間で蓮姫を驚かせるほどの腕を見せて、皆無事に竜宮城を目指すことになった。
武たちの目の前の大海原には、山の方の空から大船が幾つもザブンザブンと着水してきた。
「どの船に私たちは乗るのかしら?」
武の隣の湯築は髪をかき上げながら誰にともなく聞いていた。
「ああ、あの船よ」
高取が素っ気なく不思議な力を使って、数多の中から一隻の船を指差した。
「高取さん。鬼姫さんたちも一緒の船に乗るのかしら?」
「ええ、そうよ。私たちの船だけ最強ね」
武と高取。そして、湯築はサンサンと降る日差しの中で、しばらくは見ることができない太陽を見つめていた。
そういえば、あの三人組はどの船に乗るのだろう?
タラップというのはない大船である。武たちはそれぞれ角材でできた梯子を登っていた。大勢の巫女たちは大船の許容量いっぱいまで食材や衣類などを運んでいる。
一番最初に大船に足をつけた武は空を見上げている。
ついにここまで来たとでも思っているのだろう。
だが、武は決して一人でここまで来たのではない。
それまで、大勢の人々の思慕の頂点に立った結果である。
大船の下から鬼姫や蓮姫も登って来るのを見ているうちに、気付くといつの間にか登って来たのであろう地姫が武と話していた。
なんでも、これから先は太陽のない。暗黒の海である。皆の思慕を大切にせよと言っている。
地姫は珍しく真剣な顔であった。
「あー……困るんだけどなあ。まあ、いつものことだし。くしゃみが多くなるだけだと思っておくよ。おれは変わらないって約束したんだ」
そんな武は終始はにかんでいた。当然、麻生がいるからだ。どこかの穴へ隠れたいほど照れくさいのだが、何かの必死さからか? あまり気を抜いていないのでは?
「その意気です。あなたがモテるのは持って生まれた性分なのですから。気にしない方が非常に得なのです」
地姫は武の武運に対し、特殊な祝詞を唱えた。
数多の大船は大空を舞って、遥か彼方の暗き海へと向かって行った。