第55話

文字数 520文字

 麻生は、こんな時に武の顔を想い浮かべているのだろうか?
 あるいは……諦めの顔であろうか?
 何やら思い詰めている顔をしている。

 けれども、ふっと麻生の表情が変化していた。

「もう一つ!」
 麻生は叫んだ。



 暗雲が覆う暗き海に雨が降りしきる。
 連戦によって地姫が疲れたのか、轟雷の落ちる気配がしない海である。
 海上の南龍の周りの龍は齢は1000年といったところであるが、虚船丸からの武士たちは勢いによって、幾度も後退させていた。

 その時、天空からの二つの雷が南龍の両目を直撃した。
 瞳に寸分違わず刺さるかのような落雷である。
 南龍が目を瞑り、呻いた。
 南龍は海面で動きが止まり、しばらく呻き声が辺りに響く。

 鳳翼学園と南龍との距離は、僅か約20キロであった。
 恐らく、雷を降らしたのは地姫であろう。南龍が避ける間もない正確無比な狙いであった。

 両目を閉じた南龍は濃い憂いの表情を浮かべ。すぐさま後ろを向き、数多の龍を連れ渦潮へと帰って行った。

 これが麻生の考えた作戦であったのだろう。
 南龍をできるだけ近づけて、両目を打つ。

 恐らく、南龍は目を痛めただけであるが、見事に撃退したのだ。


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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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