第35話

文字数 660文字

 途中から湯築と武も来た。
「高取さんの従姉妹の方は何か特殊な能力があるのよね。地姫さんより凄いのかしら? あるいは同じ?」
 湯築が実力はあるのかと聞きたがっている。
「あまり、その人とは会ってないの。顔も覚えていない」
「よく知らないのはわかったよ」
 武は高取を気遣ったが、同時に高取の不思議な力に納得したようだ。
 
「そっか。どんな人かもわからない……。実力も……わからない。多分、思うんだけどその人の実力は相当なものだったりするわよね」

 湯築の懸念はあながち間違いではなさそうだ。
 何せ私でも見えないのだ。
 私もあまり知らないのだが、高取家を少々調べてみなければ……。
 まあ、後にわかるであろうが。

「家では、父と母にもあまり会って話した時がないの」
 高取がぼそりと呟いた。

 ここはフロアである。
 高取はいつもみんながフロアの修練を終えると、丁寧に掃除をするフローリングに座っていた。
 目の前に正座している地姫の目を見つめ、脳内イメージを広げていた。
 恐らく、落雷の初歩であろう。
 つまりは、射程距離である。
 落雷の落ちるイメージを鍛えているのだ。
 額に汗が滲みだした高取の周囲の空気が何やら震えだしたようだ。
 高取はキュッと目を閉じて、息を吐いた。

 それを見つめ地姫がこくりと頷いた。
「1キロに達しましたね。お見事です」
 地姫は高取に向かって初めて微笑んだ。

 ちなみに、地姫の轟雷の射程距離は100キロである。
 山をも通り越す脳内イメージは、尋常ではない。

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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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