第46話

文字数 798文字

 私もよく知らないのだが、ここでエレベーターが動かせるのだろう。
 
 武は古ぼけたスチール製のディスクでパソコンとやらをいじりだした。
 しばらくして、正面の壁面にある大型ディスプレイを見ると、幾つかの緑色のランプが点灯した。
 武は立ち上がり、もともとの浮き出ていた大汗をぬぐっていた。
「これで大丈夫です。後は、湯築たちがエレベーターが動くことに気が付けばいいんです」
「本当にあの乗り物が動くのですか?」
「大丈夫です。昔、親父と一緒に何度か入った時があるんですよ。こういった場所は慣れていますから。後はこのビルから天鳥船丸までいかないと」
 武と鬼姫は顔を見合わせて、しっかりと頷いた。
 私の知っている限り。
 武の父は機械の保守点検などをしていたような。

 一方。
 ここはエントランスである。
「へー。さすがだね。これが森羅万象を操ることができる力か」
 武装した蓮姫が光姫と何やら話していた。
「ええ。でも、まだまだ未熟なのですよ」
「あら、謙虚だね。まあ、私も似たようなものだけど」
 数多の龍をはふれば、竜宮城へ着くまでは更に数多の龍をはふる。鬼姫も蓮姫ももう十分強いというのに、上を目指していたようだ。
 けれど、天鳥船丸や虚船丸にはうかつにはこのビルからは近づけず。1000もの龍の脅威から逃れないといけないのだ。
 武たちはエントランスに戻って来ていた。
 このビルの外を見ると、周辺には固まった龍の死骸の氷柱が幾つも作られていた。
「湯築さんたちが来たら天鳥船丸へ戻りましょう!」
 鬼姫はそういうと、神鉄の刀を抜いた。
 良いタイミングで、再び動き出したエレベーターから湯築たちが来た。三人組は相変わらずだが、私が思うにただ単に危機的状況をあまり直視していないようにも思えた。
 鬼姫は遥か南の宙に浮かぶ天鳥船丸まで、先陣を切って新宿のビルの谷間を走り出した。
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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