第56話 遥かなる海
文字数 566文字
雷鳴轟く大荒れの海の空から黒い豪雨が降りしきる。海上に浮かぶ天鳥船丸も数多の虚船丸も雨に濡れながら大揺れに揺れていた。
今、武たちは日本海を南極へと向かっている最中である。
操舵室で武と鬼姫がなにやら話していた。
二人とも不穏な光姫の話を聞いた後であるようだ。
恐らく四海竜王の話であろう。
「すぐに東龍が来るそうです」
緊張した鬼姫のキッと結ばれた堅い口からやっと出た言葉だった。四海竜王のうちの一人、東龍は中でも二番目の強き龍である。
「鬼姫さんよりも強いって本当ですか? どんな相手ですか?」
武は武者震いをし、鬼姫の顔とテーブルの中央のコンパスに視線を送っている。
「齢1万年の巨大な龍だそうです……」
遥か遥か遠くの南極では、乙姫が待っているのだろう。
「俺にできることは、どれくらいなのだろうか?」
鬼姫の神妙な顔を見て、武は呟いたが雷鳴によってここからでは聞き取りにくかった。
「俺、勝ちますよ。絶対……」
外の闇夜のような暗い海には土砂降りが容赦なく降り注いでいた。
おや? さっきからコンパスがかなり不安定であった。
激しく回転し、これでは目的地を見出しにくい。
だが、私が思うに今のところ船の進路は問題ない。
「私は勝ちますよ……武様のために」
そう鬼姫はふと悲しく言った。
今、武たちは日本海を南極へと向かっている最中である。
操舵室で武と鬼姫がなにやら話していた。
二人とも不穏な光姫の話を聞いた後であるようだ。
恐らく四海竜王の話であろう。
「すぐに東龍が来るそうです」
緊張した鬼姫のキッと結ばれた堅い口からやっと出た言葉だった。四海竜王のうちの一人、東龍は中でも二番目の強き龍である。
「鬼姫さんよりも強いって本当ですか? どんな相手ですか?」
武は武者震いをし、鬼姫の顔とテーブルの中央のコンパスに視線を送っている。
「齢1万年の巨大な龍だそうです……」
遥か遥か遠くの南極では、乙姫が待っているのだろう。
「俺にできることは、どれくらいなのだろうか?」
鬼姫の神妙な顔を見て、武は呟いたが雷鳴によってここからでは聞き取りにくかった。
「俺、勝ちますよ。絶対……」
外の闇夜のような暗い海には土砂降りが容赦なく降り注いでいた。
おや? さっきからコンパスがかなり不安定であった。
激しく回転し、これでは目的地を見出しにくい。
だが、私が思うに今のところ船の進路は問題ない。
「私は勝ちますよ……武様のために」
そう鬼姫はふと悲しく言った。