第52話

文字数 482文字

「ええ、ですから……」
 地姫が珍しく困った顔をした。
「あの、宮本博士……。多分、渦潮から上がっているから……地球にはない物質なんじゃ……量産は無理みたい……南龍退治は鉄砲では無理そうです」
 麻生の言葉に宮本博士と他の研究員が頷いた。

 それもそうである。
 神鉄は龍に通用する唯一の普通の人間の武器である。
 なくてはならないのだ。

「うーんと、それでは地姫さんにお願いがあります。お願いする前に聞きたいんですが、地姫さんの雷ってどのくらいの距離まで落とせますか?」
 麻生の表には出さないようにしている不安な声音は、周囲に感づかれ不安を伝達してしまったが。
「針に糸を通すような正確さは狙えませんが、100キロは……」
「凄い! それなら、大丈夫ですね」
 麻生の今度は安心しているかのような声音に、周囲からすぐにホッとした安堵の息が漏れ出した。
 地姫は首を傾げる。
 田嶋まで真剣な顔で麻生の傍まで歩いてきた。
 
 教室の外の興味本位で立ち聞きしていた生徒たちも、麻生と地姫の美しさに目惚れながら静かに聞いている。

 ここ2年A組は、もはや麻生のために作戦会議室になったようである。

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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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