第25話

文字数 1,115文字

 ここで、これから重要なので武たちの乗る大船をよく見てみることにする。
 白い数多の帆を立て、広い操舵室があり。あの三人組はそれぞれ船室にいた。後は五十人の巫女たちがいる。一人部屋のような船室が幾つもあり、倉庫、食堂、台所、風呂場、医務室など、生活に必要な場所が幾つもある。それと、かなり広々とした甲板などもある。勿論、戦いに備えてであろう。
 修練の間とまではいかないが、日々の修練ができる一際大きな船室? フロア? よくわからないがそれもあった。
 大船の名は天鳥船丸である。武たちの船以外は全て虚船丸という。
 なお、動力は私にもわからなかった。
 恐らく、マナという不思議なもので動いているのだろう。

 船の外はまるで吹雪のような雨粒が荒れ狂っていた。
 太陽は完全に覆われ、光源は落雷しかない暗き海である。
 けれども、不思議と大船には雨や落雷が落ちてこないようだ。恐らくは地姫であろう。何か不思議な力を持っているのであろう。
 なにやら、地姫と蓮姫と鬼姫が大船の甲板の端で話していた。
 途中から高取も加わり、四人で竜宮城の正確な位置を特定できないかと話し合っていた。
「私にもよくわからないのです。竜宮城は一際大きな渦潮の中にあって、かなりの速さで移動をしています。恐らく、地球の中心を目指しているはずでしょう。乙姫の考えは、残念ですが私にもわからないのです」
 地姫が言うには、竜宮城はもうすでに地球への侵略のため動き出しているとのことだった。
 甲板を見渡すと、巫女がそれぞれ弓の訓練に精を出していた。
「あ、でも。地球の中心というより……日本の付近にまだいるわよ。竜宮城。さっき、占ったわ」
 高取である。
 さっき天鳥船丸の自分の船室で、一人占っているところを見ている。
 タロットカード占いで、そこまでわかるとは……。
 蓮姫も鬼姫も、更には地姫も驚いていた。
「不思議な方ですね。後でやり方を教えて下さいな」
 さすがの地姫も感心したようだ。
きっと、僅かながらも西洋占術のタロットカードに興味を抱いたのだろう。

「それから、ここで注意。この先、竜宮城へ近づくにつれ龍が数段強くなってくるとでたわ」
「……そうですか」
 高取の言葉に鬼姫が冷静に受け答えをしていた。
 蓮姫は「あ、そうなの」とあまり動じなかった。
「どれくら強いのですか?」
「恐らく……今までにないほどです。龍は年を得るごとに強く賢くなるのです。今までの龍はまだ若い龍でした」
 今度は、鬼姫の疑問に即座に地姫が答えた。
 この天鳥船丸だけは雨が降っていなかったが、外は大荒れの雨風が巻き起こり、他の虚船丸の大人の男たちや巫女たちは、武たちのサポートに命懸けで打って出てくれているようだ。
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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