第72話
文字数 355文字
影武者は私の煤ぼけた着物姿を見て、「ああ、長い長い時を過ごしました」と言葉が漏れた。
私は水の撥ねる鏡で外見を見た。
そこには美しい女性が写っていた。
中身だけなのだ。
時の力で捻じれ老けてしまったのは……。
「もう、お戻りになられるので?」
影武者は不思議がった。
「いや、何も変わっていないのだよ。雌雄も決してもいない。武はいい男だ。だが、本星一つとは到底比べようもないであろう。今はまだ……戻れん……」
「一度は武に出会って、見たかった」
影武者は涙をこぼした。
私はとうに枯れたせいで涙がでないが。
恐らくは、影武者と同じ顔であろう。
「遠いな。もはや年を数えることもできないほどに……」
私は本星に帰ることを今でも夢見ていた。
影武者は、今でも浦島太郎のことを想っていた。
私は水の撥ねる鏡で外見を見た。
そこには美しい女性が写っていた。
中身だけなのだ。
時の力で捻じれ老けてしまったのは……。
「もう、お戻りになられるので?」
影武者は不思議がった。
「いや、何も変わっていないのだよ。雌雄も決してもいない。武はいい男だ。だが、本星一つとは到底比べようもないであろう。今はまだ……戻れん……」
「一度は武に出会って、見たかった」
影武者は涙をこぼした。
私はとうに枯れたせいで涙がでないが。
恐らくは、影武者と同じ顔であろう。
「遠いな。もはや年を数えることもできないほどに……」
私は本星に帰ることを今でも夢見ていた。
影武者は、今でも浦島太郎のことを想っていた。