第63話
文字数 1,220文字
「今眠っているタケル様は、武の姿をしていますが、ヤマトタケルなのです。ですが、神話とは少し違う方なのです。ヤマトタケルには日本の勇者という意味があります。武はタケルとなり、文字通り日本の勇者となったのですね」
光姫はホッと息をついてから続けた。
「ようやくここまで来ましたね。これで世界は必ず救われるでしょう」
光姫のきっぱりとした一言で、皆が騒然とした。
一方。
ここは鳳翼学園。
「宮本博士。竜宮城にいる乙姫は決して悪人ではないようですね」
かなり細い研究員がコーヒー片手に言ったのだ。
今は深夜の2時である。
連日の徹夜や睡眠不足で皆、コーヒーが欠かせないようだ。
研究員たちの目の前にあるディスプレイには、どうやら、世界中の通信設備などが復帰したようで、生存者が世界中で溢れだしているというニュースがネットで流されていた。
「恐らく今までずっと見ていたんだろうな。どこかでな……。乙姫が……今もこっちを見ているのだろう。人間心理で考えるとだ。今も我々を見守っているのだろうな」
明滅する機械音のする教室でも、私にははっきりと聞こえた。
そう。確かにその通りである。
「宮本博士? それはどういう意味ですか? 乙姫は竜宮城で南極に向かっているんじゃ?」
小太りの研究員は偉そうな宮本博士を不思議な話についていけないといった顔をして見ている。
「遥か昔から、恐らく浦島太郎を追ってこの地球上にすでにいたのだろうな。それは何故か? 元凶は乙姫自身ではないからだ。元凶ではないのなら、この世界的な危機に人間心理だといろいろと推測できるのだ。多分だが竜宮城には乙姫はいないと思うんだ。影武者かだれかだろう。それならば、どこかで乙姫はこちらを見ているはずだ。そして、今の地球の生命。いや人類にもっとも脅威なのは、この地球自体の環境だ」
「え? 宮本博士? 乙姫がどこかで我々を見ているのですか? それに乙姫は侵略者じゃなくて共存をしようとしているのですか?」
小太りの研究員はディスプレイを見つめながら急に呑気に構えた。
もう世界の危機はなにもないと思いこもうとしたのだろう。
だが、誤りである。
「いや! そうではないんだ! 残念だがね。三対七の陸と海の話は前回したな。それは変わらないんだ。地球は全て海となるんだよ」
かなり細い研究員はコーヒーを持つ手が震えだした。
「結局は我々の生命は存続しないと? ひどく優しい地球への侵略者って、訳ですね……」
小太りの研究員が口を挟み皮肉を言ったのだ。
「そうだ。いずれ人類は死滅するか。地球に残された数少ない土地に生息しないといけない。だが、ここ土浦だけは別なのだろうな。恐らく……あの、嬢ちゃんだ」
宮本博士は葉巻を取り出して、火をつける。
「大丈夫ですよタケル様なら……」
その時、地姫がここ2年D組へ歩いて来た。
光姫はホッと息をついてから続けた。
「ようやくここまで来ましたね。これで世界は必ず救われるでしょう」
光姫のきっぱりとした一言で、皆が騒然とした。
一方。
ここは鳳翼学園。
「宮本博士。竜宮城にいる乙姫は決して悪人ではないようですね」
かなり細い研究員がコーヒー片手に言ったのだ。
今は深夜の2時である。
連日の徹夜や睡眠不足で皆、コーヒーが欠かせないようだ。
研究員たちの目の前にあるディスプレイには、どうやら、世界中の通信設備などが復帰したようで、生存者が世界中で溢れだしているというニュースがネットで流されていた。
「恐らく今までずっと見ていたんだろうな。どこかでな……。乙姫が……今もこっちを見ているのだろう。人間心理で考えるとだ。今も我々を見守っているのだろうな」
明滅する機械音のする教室でも、私にははっきりと聞こえた。
そう。確かにその通りである。
「宮本博士? それはどういう意味ですか? 乙姫は竜宮城で南極に向かっているんじゃ?」
小太りの研究員は偉そうな宮本博士を不思議な話についていけないといった顔をして見ている。
「遥か昔から、恐らく浦島太郎を追ってこの地球上にすでにいたのだろうな。それは何故か? 元凶は乙姫自身ではないからだ。元凶ではないのなら、この世界的な危機に人間心理だといろいろと推測できるのだ。多分だが竜宮城には乙姫はいないと思うんだ。影武者かだれかだろう。それならば、どこかで乙姫はこちらを見ているはずだ。そして、今の地球の生命。いや人類にもっとも脅威なのは、この地球自体の環境だ」
「え? 宮本博士? 乙姫がどこかで我々を見ているのですか? それに乙姫は侵略者じゃなくて共存をしようとしているのですか?」
小太りの研究員はディスプレイを見つめながら急に呑気に構えた。
もう世界の危機はなにもないと思いこもうとしたのだろう。
だが、誤りである。
「いや! そうではないんだ! 残念だがね。三対七の陸と海の話は前回したな。それは変わらないんだ。地球は全て海となるんだよ」
かなり細い研究員はコーヒーを持つ手が震えだした。
「結局は我々の生命は存続しないと? ひどく優しい地球への侵略者って、訳ですね……」
小太りの研究員が口を挟み皮肉を言ったのだ。
「そうだ。いずれ人類は死滅するか。地球に残された数少ない土地に生息しないといけない。だが、ここ土浦だけは別なのだろうな。恐らく……あの、嬢ちゃんだ」
宮本博士は葉巻を取り出して、火をつける。
「大丈夫ですよタケル様なら……」
その時、地姫がここ2年D組へ歩いて来た。