第32話 首都東京へ

文字数 663文字

 やはり、なんにでも基礎というのは大切である。  
 地姫がへとへとに疲れたので、大雨が激しく降り注ぐ天鳥船丸の甲板から、何かが吹っ切れた湯築と高取は、一目散にこれから激しい稽古をするための。基本的な稽古をしてくれと蓮姫と地姫に強く言い渡したのである。  
 二人とも武の志や考え方のように、上を見。上を目指していくのだろう。

 数刻後。
 ここはフロアである。 殺風景な空間で、気温も船内と同じで、修練の間とはかなり違うようだ。
 ところで、武たちはこの天鳥船丸のフロアでも、存在しないはずの神社の修練の間と同じ時間割を持ち出していた。
 武は稽古をするため。鬼姫にさっき使った技を教えてほしいと申し出た。フロアでたった今、龍と戦った神鉄の刀を腰に差した武はしっかりとした顔をしている。
 鬼姫は武の眼差しを見て、顔を赤くしてこっくりと頷いた。
「武様はさすがですね。(また夜這いをしますから……)私の動きをしっかりと見ていてくださいね」
 鬼姫は小声で何か良からぬことを呟き。真剣を一振りし、鞘へ納めた。
 どうやら居合い術の型の初歩を伝授するようである。
 鬼姫は初発刀からの一連の刀捌きを披露した。
 まるで、神楽を舞うようである。
 その美しさに見惚れながら、武は必死に真似をした。
 真剣を振り続ける武は、まるで体中の汗を全て絞り出すかのような無駄のない体捌きであった。  
 見事なものである。
 恐らく、武という男は上が現れると、更に上が見えるのだろう。
 私にとっては頼もしい限りである。
 早く……。
 早く……。
 私のところへ……。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み