第123話

文字数 648文字

「うーん……。躱し損ねたわね」
 ぶつかった時にドンっという音がしたけど。
 妙な感覚だった。ぶつかったようで、ぶつかっていないような感じだ。
「うっ……」
 俺は女性に当たってしまった肩を摩った。
 少し痛くて腫れているみたいだ。
「私は姉と一緒にクンフーの道場を営んでいるから、ぶつかったことは気にしないでね。ごめんなさい寸でのところで当身をしたの」
 当身を瞬間的にしていたなんて、気がつかなかった。
 俺の師範の一人。麻生 弥生の父親みたいな人だった。
 相手がぶつかる時に、寸でで膝、肘を軽く当てて衝撃を抑えたんだ。
 この人は強い。
 俺の直観がそう告げている。
「あなた。山門 武でしょ。これを……? あら? もう持ってるの? それじゃあバイバイ! 頑張ってね!」
 赤色の髪の女性は竜宮城方面へと走った。

 俺は気を取り直して、急いだ。
 更に西へと道を走るころには、空の上の龍の腹がくぐもった不気味な音と共にまた降りだしていた。

 西龍と光姫さんがいるところからは、離れた海岸の下。
 俺は西の砂浜へと辿り着いた。
 そこには、砂浜を埋め尽くすかのような魚人の大軍があった。どうやら、リンエインの策と俺の感が合致したんだ。
 目前の大海には、竜宮城の城下町の空を腹で覆った龍の首が数十もあった。海を埋め尽くすかのような万を超えるおおよそ7千歳の龍が、海から昇ってくる。
「みんな! 俺も参戦する!」
 俺は雨の村雲の剣を抜刀した。
 魚軍が全員モリを構えた。

「全軍突撃ー!!」

 大勢の魚人の将たちの号令が海へと響き渡った。
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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