第29話 暗き海

文字数 621文字

「ああ、疲れた……まいったなあ……」
 薄暗い場所で武はそう呟いていた。
「毎夜、毎夜……。凄く嬉しいんだけどなー……。これ、どうしようか? ……麻生……」
 へとへとになった武の船室の布団には、毎夜寝続けていたためであろうが。鬼姫の枕が今日は素早く置いてあった。正に地姫の言う通りであった。



 一方、ここは鳳翼学園。

 恐らく、竜宮城の正確な位置を知っているのは宮本博士たちであろう。
 私には機械というものはよくわからないところだ。
 どうにも昔にはなかったものなので、致し方ない。

2年D組の機械音と明滅を繰り返す機材に囲まれた一室に、宮本博士と一人の謎の巫女が話していた。
 その巫女は高取の母方の従姉妹だと言っている。
 武たちが無事なのを知らせ。
 麻生を大切にせよとも言い。
 幾つか話すと。
 踵を返し、帰って行った。

 世にも美しい巫女だ。
 なぜか私でも巫女の後を追えず。不思議と見ることができない。
 誰なのだろう?

 研究員たちが皆呆けている。
 無理もない。
「竜宮城の位置!」
 宮本博士の一喝で、我に返ったように一人の研究員がディスプレイを見て言い放った。
「今は沖縄です!」
 宮本博士は、そのかなり細い研究員にもう一度言う。
「正確には?」
 かなり細い研究員は再びディスプレイに目を戻し、頭を回転させた。
「南緯66度33分へ向かうかと」
「南極点……南極か……」
 宮本博士は一人ごち、そのまま廊下へと歩いて行った。
 今は、月の夜。
 人々が寝静まっていた。
 
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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