第69話 一万キロの恋と五百年の恋
文字数 730文字
ここは天鳥船丸から13000キロ先である。おおよそ日本から南極までの距離が15000キロなので、もうすでに南極大陸が見えていた。
氷山が浮かぶ極寒の海の底の竜宮城は、魚や貝が彫り込まれた外壁の中央に、桜や生い茂る葉が天空から舞う。春夏秋冬の木々に囲まれた巨大な城がる。その周囲に更に珊瑚でできた武家屋敷や民家などの種々雑多な建造物がある。人々が住んでいるのだ。
四季彩る部屋の中央に乙姫の周りに四海竜王たちが集っていた。残るは北龍だが、北龍は続けざまの敗戦にもまったく動じていないようだ。
「それならば……これはどうかな?」
北龍は生真面目な態度で四つの宝石を円卓の中央に並べた。
それらは東西南北と並んでいる。
周りには伏兵から足軽まで多様な駒が並んでいた。
「そうだね。武よ」
東龍が素直に頷き、
「異存はないよ」
南龍は些か憤りを持って言う。
「そうですね」
西龍もこくりと頷いた。
そう、総力戦にでたのだ。
「では、戦の準備をしてください」
なんとも美しい声音であろうか。
乙姫は、そういうと、静かにこくりと頷いた。
「それでは、今日はここまでです」
乙姫はこの後の重要な会議のために席を立ったのだ。
私は乙姫の後を追う。
乙姫は常に水の滴る葵色の着物を着ている非常に美しい女性である。珊瑚の靴の踵を鳴らし、別の会議室へと向かった。
これから口煩い魚人たちとの会議である。
いつものことだが、乙姫は何も聞かず何も口にせず、我関せずを貫いていた。おおよそ500年前からの恒例であった。
それは今でも変わらない。
彼らは話を聞いてもらいたい一心で、それ以外には何もない。
だから、乙姫は些かも関与しなかった。
氷山が浮かぶ極寒の海の底の竜宮城は、魚や貝が彫り込まれた外壁の中央に、桜や生い茂る葉が天空から舞う。春夏秋冬の木々に囲まれた巨大な城がる。その周囲に更に珊瑚でできた武家屋敷や民家などの種々雑多な建造物がある。人々が住んでいるのだ。
四季彩る部屋の中央に乙姫の周りに四海竜王たちが集っていた。残るは北龍だが、北龍は続けざまの敗戦にもまったく動じていないようだ。
「それならば……これはどうかな?」
北龍は生真面目な態度で四つの宝石を円卓の中央に並べた。
それらは東西南北と並んでいる。
周りには伏兵から足軽まで多様な駒が並んでいた。
「そうだね。武よ」
東龍が素直に頷き、
「異存はないよ」
南龍は些か憤りを持って言う。
「そうですね」
西龍もこくりと頷いた。
そう、総力戦にでたのだ。
「では、戦の準備をしてください」
なんとも美しい声音であろうか。
乙姫は、そういうと、静かにこくりと頷いた。
「それでは、今日はここまでです」
乙姫はこの後の重要な会議のために席を立ったのだ。
私は乙姫の後を追う。
乙姫は常に水の滴る葵色の着物を着ている非常に美しい女性である。珊瑚の靴の踵を鳴らし、別の会議室へと向かった。
これから口煩い魚人たちとの会議である。
いつものことだが、乙姫は何も聞かず何も口にせず、我関せずを貫いていた。おおよそ500年前からの恒例であった。
それは今でも変わらない。
彼らは話を聞いてもらいたい一心で、それ以外には何もない。
だから、乙姫は些かも関与しなかった。