第5話
文字数 1,374文字
さっきまでいたが、今は教室へ戻ってしまった高取 里奈という名の女子だ。タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女で、全校生徒での成績が三番目と頭脳派なのだ。意外にも、おかっぱ頭の可愛い容姿である。
ちなみに、武の成績は全校生徒で二番目である。
もう一人は、麻生の後ろで髪をかき上げている美人で、美貌では学校内で二番目と噂される人気者の湯築 沙羅である。運動神経に大変優れ。陸上県大会二年連続優勝者である。ここから見ても、茶色がかったボリュームのある髪が特徴的である。
「麻生さん。私も食べ終わったから教室へ戻るわ。後で、体育館裏へ来て」
湯築は何か含みがあるが微笑みを絶やさず教室へと戻って行った。
麻生と武は弁当箱を取り換えると、教室へと廊下を歩きだす。理科室はいつもみんなで昼飯に使っていた。
「ねえ、武。雨がこれからも止まなかったら。どうする? フフ、私は船で武と一緒に無人島へ行きたい。ずっと、二人で暮らしましょう。何もないところがいいの。今生の別れも惜しまずに。二人だけで、日本を捨てても……そこで、幸せになりましょ」
麻生が俯き加減で話し出した言葉に、武はくしゃみをした。
「誰か噂しているな……。俺はそうだなー。案外、学校へ行っていると思うな。この学校って、柔道部の翔先生や数学の鈴木先生に、剣道の尾鍋先生とか、色々お世話になっているからね。あー! また噂している!」
武は頭を掻いては、のんきだが律儀なことを述べながら後ろを振り向いた。
武の後ろには、いつもいるのだ。
低学年の三人が……。
武自体名前はあまり覚えていないのだろうが、美鈴と河田と片岡である。
さすがに、気配を消したわけではないが、理科室にもいたのだ。
いつも武の後を追っている。
当然、三人は武のことが好きなのだろう。
今もひそひそと、武は剣道では宮本 武蔵と同じく日本で最強なのではなど、柔道ではオリンピックへ出場するだろう。東大へ進学するはずだ。数学者になって、ノーベル賞なりとるのだろうなどと、毎日のように噂をしているのだ。
ここから見ても、三人組は……実はそれぞれ可愛らしい容姿なのだが……いつもとある妄想に浸っていた。
ちょっとしたスキでもあれば、ラブレターなり特性お弁当なりと、執拗な横恋慕のような攻撃をし、なんとか武という名の美男子に付け入ろうと思っているのだろう。
けれども、恐らく無理だろう。
三人組には悪いのだが、私の知る限り麻生は武のただの幼馴染ではないようである。
いわば夫婦であろう。
武に対しての憧れが日に日に強くなるのは私にもわかるのだが……。
教室はがらんどうとしていた。
生徒数はまばらだ。
休憩時間以外は皆暗いようだ。
武は席につく。
その隣の席に麻生が座ると、ちょうど担任の先生の本堂先生が教室へと入ってきた。
授業は意外にも厳しい。
数式が難解過ぎて、武と麻生以外は何度も先生へ質問をしていた。
ここは進学校の中でもトップクラスの精鋭教師が揃うところ。
また、例外もある高取と湯築は黙々と教科書と黒板を目で往復し、ノートにひたすら書き込んでいた。
二人とも、麻生への対抗意識と武への憧れがあるようだ。
皆、女子は狙っているのだろう。
武を……。
ちなみに、武の成績は全校生徒で二番目である。
もう一人は、麻生の後ろで髪をかき上げている美人で、美貌では学校内で二番目と噂される人気者の湯築 沙羅である。運動神経に大変優れ。陸上県大会二年連続優勝者である。ここから見ても、茶色がかったボリュームのある髪が特徴的である。
「麻生さん。私も食べ終わったから教室へ戻るわ。後で、体育館裏へ来て」
湯築は何か含みがあるが微笑みを絶やさず教室へと戻って行った。
麻生と武は弁当箱を取り換えると、教室へと廊下を歩きだす。理科室はいつもみんなで昼飯に使っていた。
「ねえ、武。雨がこれからも止まなかったら。どうする? フフ、私は船で武と一緒に無人島へ行きたい。ずっと、二人で暮らしましょう。何もないところがいいの。今生の別れも惜しまずに。二人だけで、日本を捨てても……そこで、幸せになりましょ」
麻生が俯き加減で話し出した言葉に、武はくしゃみをした。
「誰か噂しているな……。俺はそうだなー。案外、学校へ行っていると思うな。この学校って、柔道部の翔先生や数学の鈴木先生に、剣道の尾鍋先生とか、色々お世話になっているからね。あー! また噂している!」
武は頭を掻いては、のんきだが律儀なことを述べながら後ろを振り向いた。
武の後ろには、いつもいるのだ。
低学年の三人が……。
武自体名前はあまり覚えていないのだろうが、美鈴と河田と片岡である。
さすがに、気配を消したわけではないが、理科室にもいたのだ。
いつも武の後を追っている。
当然、三人は武のことが好きなのだろう。
今もひそひそと、武は剣道では宮本 武蔵と同じく日本で最強なのではなど、柔道ではオリンピックへ出場するだろう。東大へ進学するはずだ。数学者になって、ノーベル賞なりとるのだろうなどと、毎日のように噂をしているのだ。
ここから見ても、三人組は……実はそれぞれ可愛らしい容姿なのだが……いつもとある妄想に浸っていた。
ちょっとしたスキでもあれば、ラブレターなり特性お弁当なりと、執拗な横恋慕のような攻撃をし、なんとか武という名の美男子に付け入ろうと思っているのだろう。
けれども、恐らく無理だろう。
三人組には悪いのだが、私の知る限り麻生は武のただの幼馴染ではないようである。
いわば夫婦であろう。
武に対しての憧れが日に日に強くなるのは私にもわかるのだが……。
教室はがらんどうとしていた。
生徒数はまばらだ。
休憩時間以外は皆暗いようだ。
武は席につく。
その隣の席に麻生が座ると、ちょうど担任の先生の本堂先生が教室へと入ってきた。
授業は意外にも厳しい。
数式が難解過ぎて、武と麻生以外は何度も先生へ質問をしていた。
ここは進学校の中でもトップクラスの精鋭教師が揃うところ。
また、例外もある高取と湯築は黙々と教科書と黒板を目で往復し、ノートにひたすら書き込んでいた。
二人とも、麻生への対抗意識と武への憧れがあるようだ。
皆、女子は狙っているのだろう。
武を……。