第68話
文字数 1,537文字
天鳥船丸と数多の虚船丸の前方60キロ地点に、巨大な渦潮が中央に発生し、それを合図のように星の数の渦潮がその周辺に発生した。
四海竜王の一人。西龍である。
渦潮から昇った西龍は、まるでヤマタノオロチのような首が八つもある巨大な龍である。周辺の渦潮から昇る龍は、どうみても軽く2000歳は超えていた。
雷鳴の稲光で、西龍のそれぞれの首がわかる。その顔は目が三つで異様に口が細長い。蛇のような不気味な姿だが、元は美形な男子であるのだ。
天鳥船丸の甲板へとでた光姫と高取は、猛烈な速さで迫りくる龍の群れに落雷と雹を降らした。
光姫は雹を降らすと同時に、海域の周囲に竜巻を呼んだ。極寒の吹雪が数多の龍を襲う。
高取の落雷は正確に2000歳の龍の頭上に幾つも見事直撃していた。
「さあ、湯築! 私たちも行くよ!」
湯築と蓮姫も甲板から龍に向かって飛翔した。
鬼姫は西龍目掛けて居合い抜きをしようとしたが、タケルによって押し止められた。
「鬼姫。少し下がって」
タケルの身体の周囲には、目に見えるほどの優しい気が充満していた。
それによって、なんともすがすがしい風が辺り一面を通り抜ける。
まるで、生まれたばかりの風が健やかに吹いているかのようだ。
それを見て西龍は一瞬ひるんだ。
だが、神鉄の刀を抜いて海面を走りだすタケルの速さは常軌を逸していた。
おおよそ20キロの距離を、わずか六秒で走り抜けたのだ。
すぐさま西龍の八つの首がタケルを襲う。
なんなくタケルは、西龍の首をうまく躱しながら一本また一本とはふっていた。
「凄い!」
鬼姫は2000歳の無数の龍と苦戦を強いられながら、遥か遠くのタケルの姿に向かって、目を見開いた。
蓮姫や高取、湯築。虚船丸の武士に巫女も目を見開いた。
多くの2000歳の龍もそれぞれタケルの方を見た。
いつの間にか、西龍は一本の首を残すだけとなっていた。
西龍はすぐさま後ろを向き怒りを募らせる表情のまま逃げ出していった。
タケルの強さの前では、四海竜王の西龍も手も足もでないのだろう。
けれども、タケルの力はまだ未知数だが、西龍は四海竜王の中では一番低い力の龍である。
一番強きは北龍なのだ。
「二重人格? とは、なんですか?」
鬼姫は首を傾げた。
武が寝ている医務室での光姫と鬼姫たちの会話である。皆、せせこましい医務室で丸椅子に座っていた。
三人組は皆、難しい顔をして口々に言った。
「今まで気が付かなかったとは……」
「不覚です」
「不覚ですね」
武の怪我はみるみるうちに回復しているようだが、やはりダメージは大きかったのだろう。片腕には未だ血が滲んだ包帯が巻いてあった。
今も光姫の強い勧めで簡易ベッドで寝かされていた。
「一つの身体に二つの魂があることをいうの」
高取である。
「さすがに私もわからない。いや、わからなかった」
高取は立ち上がり光姫となにやら話し出した。
薬湯を小瓶に注いでいる光姫は、その薬湯の刺激臭に顔をしかめている高取にしっかりと頷いた。
光姫に高取は何を話したかと言うと、ここからでは聞き取りにくかったが、「このまま武の中にタケルがいるのは、ずっとなの? 武は二重人格のまま?」である。高取は確かにそう言っていたのだ。そう、武の第二の人格が芽生えたのだろう。
これから、麻生と武の間にタケルがいる。
不思議なことだが、そうなったのだ。
麻生はどうだろうか? タケルも武も受け入れたのだろうか?
だが、私は様子見のために竜宮城へ行かなければならない。四海竜王で残るは最強の北龍のみであるが、気になるところがあるのだ。
四海竜王の一人。西龍である。
渦潮から昇った西龍は、まるでヤマタノオロチのような首が八つもある巨大な龍である。周辺の渦潮から昇る龍は、どうみても軽く2000歳は超えていた。
雷鳴の稲光で、西龍のそれぞれの首がわかる。その顔は目が三つで異様に口が細長い。蛇のような不気味な姿だが、元は美形な男子であるのだ。
天鳥船丸の甲板へとでた光姫と高取は、猛烈な速さで迫りくる龍の群れに落雷と雹を降らした。
光姫は雹を降らすと同時に、海域の周囲に竜巻を呼んだ。極寒の吹雪が数多の龍を襲う。
高取の落雷は正確に2000歳の龍の頭上に幾つも見事直撃していた。
「さあ、湯築! 私たちも行くよ!」
湯築と蓮姫も甲板から龍に向かって飛翔した。
鬼姫は西龍目掛けて居合い抜きをしようとしたが、タケルによって押し止められた。
「鬼姫。少し下がって」
タケルの身体の周囲には、目に見えるほどの優しい気が充満していた。
それによって、なんともすがすがしい風が辺り一面を通り抜ける。
まるで、生まれたばかりの風が健やかに吹いているかのようだ。
それを見て西龍は一瞬ひるんだ。
だが、神鉄の刀を抜いて海面を走りだすタケルの速さは常軌を逸していた。
おおよそ20キロの距離を、わずか六秒で走り抜けたのだ。
すぐさま西龍の八つの首がタケルを襲う。
なんなくタケルは、西龍の首をうまく躱しながら一本また一本とはふっていた。
「凄い!」
鬼姫は2000歳の無数の龍と苦戦を強いられながら、遥か遠くのタケルの姿に向かって、目を見開いた。
蓮姫や高取、湯築。虚船丸の武士に巫女も目を見開いた。
多くの2000歳の龍もそれぞれタケルの方を見た。
いつの間にか、西龍は一本の首を残すだけとなっていた。
西龍はすぐさま後ろを向き怒りを募らせる表情のまま逃げ出していった。
タケルの強さの前では、四海竜王の西龍も手も足もでないのだろう。
けれども、タケルの力はまだ未知数だが、西龍は四海竜王の中では一番低い力の龍である。
一番強きは北龍なのだ。
「二重人格? とは、なんですか?」
鬼姫は首を傾げた。
武が寝ている医務室での光姫と鬼姫たちの会話である。皆、せせこましい医務室で丸椅子に座っていた。
三人組は皆、難しい顔をして口々に言った。
「今まで気が付かなかったとは……」
「不覚です」
「不覚ですね」
武の怪我はみるみるうちに回復しているようだが、やはりダメージは大きかったのだろう。片腕には未だ血が滲んだ包帯が巻いてあった。
今も光姫の強い勧めで簡易ベッドで寝かされていた。
「一つの身体に二つの魂があることをいうの」
高取である。
「さすがに私もわからない。いや、わからなかった」
高取は立ち上がり光姫となにやら話し出した。
薬湯を小瓶に注いでいる光姫は、その薬湯の刺激臭に顔をしかめている高取にしっかりと頷いた。
光姫に高取は何を話したかと言うと、ここからでは聞き取りにくかったが、「このまま武の中にタケルがいるのは、ずっとなの? 武は二重人格のまま?」である。高取は確かにそう言っていたのだ。そう、武の第二の人格が芽生えたのだろう。
これから、麻生と武の間にタケルがいる。
不思議なことだが、そうなったのだ。
麻生はどうだろうか? タケルも武も受け入れたのだろうか?
だが、私は様子見のために竜宮城へ行かなければならない。四海竜王で残るは最強の北龍のみであるが、気になるところがあるのだ。