第61話

文字数 532文字

 本気になれば、大船全てが破壊されるであろう。
「本気になった東龍にはかなわないわ! みんな天鳥船丸へ避難して! ここは逃げるのよ!」
 高取である。
 湯築がそれを聞いて、船内へと走り出し、皆、天鳥船丸へと非難した。

 だが、武だけは東龍の面前に対峙していた。
 東龍は嬉々として咆哮を上げた。
 豪雨と落雷の中、濡れた神鉄の刀を構えた武は次に東龍の心の臓へと飛翔し突きをした。巨大な敵に対して、武は雄々しく応戦したかったのだろう。
 しばらくの間。
 東龍の恐ろしい咆哮と武の怒号が鳴り響き。
 刀からの火花と牙からの火花が暗き海に散っていたが。
 鬼姫たちは驚愕した。
 武は暗き海へと落ちそのまま濁流へと呑み込まれていったからだ。

 

 数刻後。

 ここは天鳥船丸の医務室である。
 照明に灯され薬草や薬湯などの入った瓶がからの匂いが充満した部屋である。
戸棚から、光姫が一つの瓶を取り出していた。
 医務室の簡易ベットの上で目を瞑っているのは、武であった。
 ここから見ても息をしていない。武は片腕が血塗れで、胸部から腹部まで大きく裂けていた。
 この医務室には武と光姫しかいなかった。
 光姫は別に悲しんでもいなかった。
 何故であろう?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み