第74話

文字数 678文字

 一方 ここは天鳥船丸である。

 南極の竜宮城目指して高速で飛ぶ天鳥船丸に驚いていると、フロアでは武と光姫の手合わせの真っ只中であった。
「いきます!」
 光姫は長刀を目にも止まらぬ速さで横一文字に薙ぎ払った。けれど、即座に武は腰を低くし、光姫を飛び越えてしまうほどの跳躍をし、空中で一回転をした。光姫の背後を取った武は着地後に木刀を光姫の首筋に寸止めで、素早く押し当てようとした。
 その時、長刀の刃の反対側。石突きが武の胸に迫っていた。
 それは武の胸に食い込んだが、武は動じずに見事、光姫の首を寸止めだが取ったようだ。
「お見事です。ここまでよく鍛えましたね」
 こちらに振り向いた光姫は、冷汗でびっしょりといった感じだったのだが、微笑んでいた。
「ガハッ! 鬼姫さんのお蔭です」
 武は吐血をして木刀を光姫の首から離し、少し天井を見つめた。
 武自身、やっとここまで来たと思っているのだろう。
 それは私もである。
 鬼姫よりも強い光姫を乗り越えたのだ。
 今後はあらゆる剣術の基礎のおさらいである。

 武は四海竜王と戦う以外にはタケルにはならないようだ。恐らくは内面で二人で相談したのだろう。
「お怪我が心配ですので、早くに医務室へと行きましょう」
 
 光姫の一声で武は血を吐いていることに、やっと気が付いたようである。腕で口の周りの血を拭うと、武は律儀に礼をしていた。

 本当に真面目な男である。
 血のりのついた腕を見ると、少し心配になるが、光姫は神業ともいえる手加減をしていたのだろう。
 あまり武の胸は痛んでいないようでもある。
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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